イタリア映画祭 2021

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イタリア映画祭2021というのが開催されている。

こういう時いつも良さそうだけどそこまで手が回らないというような気持ちでいたのだけど、今年は「ル・バル*1や「ラ・ファミリア」で大好きになったエットーレ・スコラ監督の未見の映画が公開されるので観てみた。

 公式サイトより↓

ローマの人々

[2003年/93分]原題:Gente di Roma
監督:エットレ・スコーラ
出演:ジョルジョ・コランジェリ、アントネッロ・ファッサーリ、ヴァレリオ・マスタンドレア
特別な一日』の巨匠エットレ・スコーラが、"永遠の都"ローマに生きる普通の人々を追いかけた軽快な喜劇。バスの中のおかしな人々、浮浪者同士の喧嘩、ビンゴ会場の人々、養老院の中、年老いた父親と夕食をレストランで共にする息子など、早朝から深夜までの20以上のエピソードが語られる。それらをつなぐのはオレンジ色のバス。ステファニア・サンドレッリが実名で登場するほか、ナンニ・モレッティの集会演説のシーンなども挟み込まれている。

 

 

スコラ監督の作品、ひとつの場をくくりによく映像を作られるけれど今回の場をつなぐバスも良かった。監督の20世紀の作品は割合追っかけられたけれど、21世紀に入ってからの作品は少なくとも日本ではあまり公開されていなく、とても貴重な体験ができた。ナンニ・モレッティ監督なんかも出てきて演説をしていたり、スコラ監督が自分と同時代に生きていた人なんだなと実感。さらに身近に感じた。ごくごく当たり前に古い建造物が生活の中に溶け込んでいるローマ。それを自然な背景として描かれる現代。その溶け込みがいい。

ナンパや恋愛がらみの話、ビンゴや賭け事の好きな主婦のエピソードなども出てきて、すべてのトーンはごく隣にいる人という感覚。自分の心に残ったのは移民や差別の問題、シニアの問題など。3つの言葉を覚える認知症のテストの場面では、こんなもので人間の価値ははかれないさと強く思わせつつ、篩にかけられている時のひとの表情のリアルさが胸に迫る。年老いた父親とレストランで会食のエピソードは父親のそれまでの人生を象徴している身じまいも素晴らしいし、憎たらしいほどの我を発揮したあとの姿が胸に迫る。シリアスなテーマもあたたかくユーモアまじえて描かれているし、絶妙の切り取り方でさすが名匠。墓場で眠っている人の声がきこえる男のエピソードも、彼の日常とうまく溶け込んでいて、怪奇談的取り扱いじゃなくて、ごく普通の愉快な風景と描いているところが素晴らしいな、スコラ監督。

楽しい時間を過ごせた。

公開は2021/7/18まで。