暗黒街の弾痕

この映画が源流となっている映画(こちら参照)は割合みてきたのだけど本家本元をやっと観ることができた。
その後作られた映画の方は女性が道行の相手に惹かれる内面がわかるようになっているが、こちらは、そこのところは省略してあり、一緒に過ごしたい気持ちはもうすでにあるものとしてのスタートになっている。

先日読んだ「傷だらけの映画史」*1では、この映画について一章が割かれている。

山田宏一氏が、

普通の、凡庸な人間に限って、安全のために前科者を追放したり密告したりする。そういうことに対するフリッツ・ラングの憎しみ、怒り、孤独な悲しみというものが迫ってきますね。

と語った後、蓮實重彦氏が

それは彼のドイツでの経験が出ていると思いますね。

ということで*2、確かに、お二人が語っておられるように最初の宿屋のところ、また最後の、たばこを買っているところを目撃する男性、猫と一緒に寝ているような無害そうな男性が、というところでかっちり表現されていたように思う。ラベルをつけられたらぬぐうことの厳しさ。宿屋の、いいにくいことを相手がいったようにして伝えようとする小市民的夫婦、この描写、先日観た三谷幸喜氏の芝居「不信」*3で生かされていたような気がするけれど、どうだろうか・・

雨の襲撃シーンは「犯罪王デリンジャー」という映画でまるまま使われているらしい。監督のマックス・ノセックもドイツ系だからラング監督が使っていいよ、といったのでは?という蓮實氏が語っておられる。
あのシーン、製作者の意図通りの反応をしたなあ・・

暗黒街の弾痕 [DVD] FRT-309

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  • 出版社/メーカー: フジデン
  • 発売日: 2008/05/25
  • メディア: DVD

*1:http://d.hatena.ne.jp/ponyman/20170808/1502179701

*2:フリッツ・ラングはナチの手を逃れてドイツからフランスをへてアメリカに亡命してきたとらしい

*3:http://d.hatena.ne.jp/ponyman/20170729/1501312169