こわれゆく女

邦題がすごくて見る時を選んだりしていたけれど、先日大阪のブックカフェ ワイルドパンチで映画評論家ミルクマン斎藤さんのジョン・カサヴェテス講義をきいてみてる気に・・
ミルクマンさんがおっしゃってたんだけど『こわれゆく女』ってあるけれど原題は「A Woman under the infuluence」であり、決して見世物的なものではない。あふれすぎる愛情を持て余し、日常のラインから飛び出してしまうジーナ・ローランズ演じるメイベル。それに懸命に対応するつもりが、なんだかオレ流な感じでこれではメイベルの調子も悪くなるだろうと思えるようなピーター・フォーク演じるその夫ニック。
奥さんの調子にお構いなしに(というか励まそうとして(^_^;))同僚をどんどん家に招き入れ、「こんなことになったらたまらない」と自意識過剰の自分なら思うような事態がリアルに描かれ、その気まずい状況下の周りの人々の表情、空気感が秀逸。でもかっこ悪くてもいいじゃないか、という感じが伝わってくる。
以前観たカサヴェテスの「オープニングナイト」でも、ジーナ・ローランズが情緒不安定になっていく様子が事細かに描写されていたが、その場にいあわせた人々の表情などのリアルさなどを味わうのもカサヴェテスの醍醐味のひとつのような・・
かかる音楽はオペラとジャズ。ブルカラーのニックの日々にごく自然にオペラの音楽が溶け込んでいて、ニックはパスタをしょっちゅうふるまって、メルビルの父に嫌がられているくらいだからおそらくイタリア系のようだけど、「トスカの接吻」や「月の輝く夜で」で感じた、オペラが特別な人たちのものではないイタリアの風土をここでも感じた。
おどろおどろしい邦題が意図するようなものでなく、ごく地に足ついたある家庭の一コマであり、ラストへの持っていきかたもセンセーショナリズムとはまるで反対の方向で大変よかった。

こわれゆく女 HDリマスター版 [DVD]

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