フランク・キャプラ 第二次世界大戦 1,2

 フランク・キャプラが戦時中在籍していたアメリカ陸軍情報部に依頼され、製作したドキュメンタリーシリーズ。だから当たり前だが日本側の事情、葛藤などは割愛、とにかく起こったことを、みている人がこの連中とは戦わなければならないという気持ちを起こさせるようにうまくまとめてある。42年度アカデミー最優秀記録映画賞受賞作品。

第一巻はムッソリーニヒットラーの台頭、満州事変など

第二巻はドイツのチェコポーランド侵攻 

ドキュメンタリーということで「映像の世紀」のような感覚でみてしまうと、こうだから戦わなければならないという当初の目的である宣伝に、不思議な違和感を感じたりもするが、それだけ、事実の並べ方がきちんとしているということかもしれない。ドラマ映画などではみているが、まとまった戦争の経緯は全然整理できていなかったので順番だけでも頭に入る。

大林宣彦監督の最後の講義という番組*1で、アメリカの作った戦争のドキュメンタリー映画で日本の劇映画が使われている、その方が実戦の映像を使うよりよりしっかりと伝えたいところが伝わるからという話が出ていたけれど、このシリーズなのだろうか?ふとそう思うようなところが、第二巻にもあった。(ドイツの場面だが)今後の巻もみたり、調べたりしたい。

日本の戦意高揚映画もつらい気持ちでみるけれど、こういう映画っていうのはまた違うつらさもあるものだなあ・・

 

フランク・キャプラ 第二次世界大戦 戦争の序曲 Vol.1 [DVD]

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柳川掘割物語

北原白秋や旅の特集にあるような柳川の美しさを謳った作品かと思いきや、柳川の美しさも伝えつつ、もっともっと見るものの生き方に迫る骨太な物語であった。柳川の掘割が一時汚れてしまっている話はきいたことがある。そして、それをコンクリートで埋め下水道整備という形にしようとほぼ話が決まっていたところ、市の担当者の努力で市民を動かし、自分たちで美しい水を取り戻すという事を一緒に汗を流し一つの水路で実現することによって広めていくことができた物語である。なかなかにできることではない。自分の住んでいるエリアも簡素化簡素化、個個が進み、面倒くさいことから遠ざかる傾向にある。旧来の方法は合理的でないとわかっていながら変える方が大変だからという処理のことも多く、ますます従来の町内会組織などから気持ちが離れる人が増えたり・・結局それを改革する時間が惜しいというところで終わってしまう日々だが、それでいいのかと問われているような、次はみている君たちだよといわれているような気持ちになった。また黒澤映画「生きる」のことなども思い出す。
この映画の精神は高畑監督の「平成狸合戦ぽんぽこ」などにも流れているらしい。かねがね「ぽんぽこ〜」は評判をきいているだけで未見だが、近いうちにみてみたい。

柳川掘割物語 [VHS]

柳川掘割物語 [VHS]

  • 発売日: 1992/11/20
  • メディア: VHS


☆このあとDVDの方をみたら、赤坂憲雄氏が高畑監督にインタビューをされている映像が入っていたが、本編で活躍された市役所の担当者の広松伝さんが地域とはつながり、外での活動はされていたけれど、市役所の中では孤立し、本来の役所の中で能力をもっておられることを発揮できなくなられたことなど出てきて複雑な気持ちになった。(やらなきゃいけない場面では、役所の中でも、また市民に対しても優しい顔ばかりしないで強い調子で対することもされる人だったとの高畑さんの話も印象深かった。)もうひとつはいっていた「沖端水天宮祭」は、「廃市」*1に出てきた場面を思い出した。

柳川堀割物語 [DVD]

柳川堀割物語 [DVD]

  • 発売日: 2003/12/05
  • メディア: DVD

裁判長のお弁当

日本映画専門チャンネルで放映された東海テレビのドキュメンタリー傑作選にて。2007年の作品。

平成ジレンマというタイトルの東海テレビのドキュメンタリーについてアナウンスしているブログから

ナレーション:宮本信子 プロデューサー:阿武野勝彦 ディレクター:齊藤潤一

ギャラクシー賞 大賞、日本放送文化大賞 入選

弁当が二つ。ある裁判長の注目すべき日常。愛妻弁当を毎日昼と夜、執務室で二回食べる生活サイクル。日曜も祝日も夜十時まで仕事を続けている。名古屋地裁の天野裁判長は、毎年400件の新規事件と100件の裁判を同時進行しなくてはならないのだ。日本で初めて、現役の裁判長に長期密着し、裁判所の内部そして裁判官の肉声を世に出したドキュメンタリーである。

裁判官の考え方が一般市民の考えとかけ離れているといわれることがあるが、つきあっている相手が被告になる可能性も考えてつきあいの幅は広げないようにしているという。
よく学生時代のつきあいが一番といわれるが、確かに一旦社会に出てしまったらその社会のルールが第一義になってしまうよな。
また人数が増やされず扱っている件数が大変多く、以前は裁判官は現場を自分の眼で見に行ったりもしていたが、現在では検察官の書いたものをベースに、それを法に照らしてどうかという判断になるとのこと。(裁判官によって新事実が発見されるような時代劇的な展開は期待薄との話)
時の政権の意に添わない判決を出した裁判官が通常の出世ルートからすっかり外れてしまっている話も紹介されていた。やはりそうなのだ・・その方は辞職勧告にもかかわらず、淡々と自分の道を歩んでおられたが、その中で気持ちを保つことの大変さ、いかばかりであろうか。。身近に感じ、考えさせられる話であった。

選挙2

「選挙」*1で、自民党落下傘候補になって右も左もわからないまま、自民党のマニュアル通りの戦い方をして当選した山内さんのその後を描いたもの。この「選挙2」は、3.11の直後、原発を推進してきた自民党が許せなくなり、無所属で、しかも街頭演説は選挙前日のみ、あとはハガキとポスターだけで選挙運動をする山内さんを追ったもの。勝つ気あるのか?と思えるようなシーンの数々。自民党の選挙の仕方って、なんというか、予備校で受験のノウハウを教えるような勝つためのスキルの蓄積があるよな、なんかみていて嫌な気分になるとしても・・とつくづく思った。
山内さんのユニークな、愛すべき姿をずっと追ううち、ライバルの候補者(市会議員で複数当選することもあって山内さんご自身はライバルという言葉は使われないし、一緒に闘って、政治をしていこうという仲間というような呼び方をされていた)たちの、割合リアルな姿も撮られていてこれがなかなか面白いし、最後の選挙結果をまるでそこの住民のように楽しみにしてしまう。

想田監督が「選挙2」の状況をベースに選挙について提案されている記事、参考になる。(こちら

選挙2 [DVD]

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ヴァーサス/ケン・ローチ映画と人生

是枝監督のカンヌの受賞後の騒ぎなどを思わせるようなところもあり、大好きな映画「ケス」*1製作秘話も。
ケン・ローチと初期の仲間はミロス・フォアマンの映画の、人物の自然な表情を撮るところにとても惹かれたという。(「ブロンドの恋」の場面が出てきていた。)
わたしは、ダニエル・ブレイク*2の撮影についても多く触れられていてみたものには、場面なども浮かびとても興味深かった。

ヴァーサス/ケン・ローチ映画と人生 [DVD]

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光と影 〜光市母子殺害事件 弁護団の300日〜

日本映画専門チャンネルでの東海テレビのドキュメンタリー特集で視聴。(こちら
この番組をみて弁護団への印象変わったなあ・・
橋下弁護士が言いだしていた弁護団への懲戒請求のはなし、こういうことだったのか・・と最近も思う事ありで・・

華 いのち 中川幸夫

公式ページ
中川さんの作品は、早坂暁氏の「華日記 昭和生け花戦国史*1を読んで以来気になっていた。
この映画では大野一雄氏の登場場面の神々しさにうたれる。
お二人の作品は生命の核みたいなものを表現している共通点があると感じた。

瀧口修造氏に捧げるオリーヴの展覧会*2 の時、質問しているご老人の着物の着こなしがとても粋でお顔も原泉さんに似ており、中川氏と中野重治氏も関係があったようなので、もしかして、原さんご本人?と思ったが、展覧会が開催された時点では原さんは亡くなっておられるようだった。*3
オフの原さんってかっこよさそう・・これではまるで話がそれているが、中川氏を巡る人々も重森三怜や土門拳からはじまり興味深いものがあった。

*1:http://d.hatena.ne.jp/ponyman/20030918/1209563928

*2:瀧口修造追悼「中川幸夫・献花オリーブ展」2000年

*3:1989年没とのこと