すぎ去りし日の・・・

 

すぎ去りし日の…【字幕版】 [VHS]

すぎ去りし日の…【字幕版】 [VHS]

 

ミッシェル・ピコリが演じている中年男の別居中の家庭への、そして、現在の恋人への揺れる気持ち、自動車事故に遭ってからの心持ちが真に迫る感じで描かれていてすごく突き刺さる。演出も演技もうまいのだろうな。ソーテ監督、「ギャルソン!」という作品をみたことがあるけれど、落ち着いて派手な描写がないけれど全く退屈せず心にきっちり届く作品で、本物の腕を感じるし、好みの感じがする。他の作品も追おう・・

ロミー・シュナイダーももちろん雰囲気があり美しく、母親とショッピングのシーンなども自然で、そしてそのあとの流れとのコントラストもありよい感じ。

探偵より愛をこめて

 

トム・ベレンジャーの探偵より愛をこめて [VHS]

トム・ベレンジャーの探偵より愛をこめて [VHS]

 

 「モダーンズ」を楽しめたアラン・ルドルフ監督作品。大真面目に探偵もののパロディーに取り組んだ感じの作品。パロディーの場合大真面目さってとても大事だと思う。

タンク・ガール

  

タンク・ガール【字幕版】 [VHS]

タンク・ガール【字幕版】 [VHS]

 

先日、「タイム・アフター・タイム*1H.G.ウェルズを演じるマルコム・マクダウェルを見て以来、彼のことが気になって仕方なく、悪役を務めたときいたこの映画もみてみた。ちょうどふや町映画タウンのおすすめにもあがっていたし。

イギリスで大人気のSFコミックを映像化とのことで、実写にコミックがうまくまざっているのだけど、もうほんとキュート。ファッションもかわいし、マルコムが水道の公共会社を牛耳って大衆を管理支配しているところは、変な現実味もあるし、「時計仕掛けのオレンジ」が透けてみえるしで、目の付け所がおもしろい。 そして、それに抵抗する勢力が武器を捨て人間の鎖みたいなものを作ったりするカンガルーとの合成人間。合成人間たちがオフビートで妙に魅力的でやつらが出てきてさらに面白くなる。合成人間の中にイギー・ポップもいたようだ。鉄火場女みたいなクソ度胸の持ち主のタンクガールに知的なサポートをするジェット・ガールに扮しているのがナオミ・ワッツメガネ女子の魅力。女子のファイティングポーズがかっこいい、「キック・アス*2みたいな魅力もある映画だった。

タンク・ガールが好む音楽がドリス・ディ、プレスリーコール・ポーターというクラシックポップな感じなのも面白い。コール・ポーターの「Let's do it」をいやがる相手に無理やり歌わせる場面の愉快さ。

監督のレイチェル・タラレイという人はジョン・ウォーターズの「ヘア・スプレー」のプロデューサーらしい。納得。

最前線物語

www.allcinema.net

戦争ものってみるのに気合いがいるけど、いやな盛り上げゼロで、粛々と緩急もうまくつけながらの展開、とても良かった。つまらない逡巡などしていたらすぐ命がなくなる世界。その中で、変な悲壮感なしに、個として生きている感じがする兵士たち。ぎりぎりの中でもユーモアもあるし、そこに魅力を感じる。

つまらない温情をかけたら隊全体が危うくなる。それをコントロールする立場を黙々と遂行する軍曹リー・マーヴィンのいぶし銀の魅力。まずはとんでもない心の傷が彼のスタートにあり、それに耐えながら目の前のことを片付けている姿が魅力的。そのひっかかりを生かした脚本が冴えている。リー・マーヴィン、以前みた「キャット・バルー」*1でもユニークな渋おじを演じていたなあ。戦場で彼が遭遇する少年や少女、民間人との短いが印象的な交流(短いところがまたとてもいい、人生は流れゆくものという感じで)、鉄兜の花と一緒に忘れられないものになりそうだ。

最前線物語 [VHS]

最前線物語 [VHS]

 

 

チューズ・ミー

eiga.com

「モダーンズ」*1がなかなか良かったアラン・ルドルフ監督。ふや町映画タウンのおすすめ印のついているこの作品もみてみた。ラジオの人気カウンセラー、ナンシーというのがちょっと「おいおい」という気分にさせられる役なんだけど、彼女を軸にしているからおもしろいドラマである。彼女の雰囲気がチェンジするところは鮮やか。ちょうど公開年次が同じ山田太一のドラマ「真夜中の匂い」というのを日本映画専門チャンネルでみていたのだけど、その中で中村久美さんという女優さんが演じている女子大生が変貌を遂げるところと空気が似ている。

ja.wikipedia.org



この「真夜中の匂い」の方も女子大生がイキがっている時は「どうしちゃったの?」と思うようなセリフが出てきたりするのだけど、*2「真夜中の匂い」にしろ、「チューズ・ミー」にしろ、80年代前半の空気も映しているのかなと思ったりしている。いろいろイキがる余裕もあって、ある意味楽天的な時代。

「モダーンズ」でも主人公はこの映画と同じキース・キャラダインだったのだが、このキース・キャラダインがすっとした美男子なもので、屈折した敵役ジョン・ローンに惹かれてしまったが、今回も、キース・キャラダインの敵役、DVで高慢で勝手なパトリック・ボーショウ演じる男ザックが気になってしまった。まあこの男、登場人物と重要に絡んでいて魅力がなきゃつとまらない話だと思う。

また謎めいた若い女として出てくるレイ・ドーン・チョン、彼女もスタートはひどくイキがっているけれど、ヌード姿でベッドに寝ているショットがとても美しく、いつか見たマリリン・モンローの写真のようだった。ちょうどその部屋にはマリリン出演の「ノックは無用」のポスターが。この部屋というのが、先述のザックの部屋でもあるんだが、そのほかにもこの映画の舞台で話のとっかかりになる「イヴ」という名にちなんで「イヴの総て」、ほか検証しきれなかったがたくさんの映画ポスターが貼られていて、それらの映画作品へのリスペクトが感じられる上に、ザックのキャラクターも感じられ面白い。(「モダーンズ」でジョン・ローンが演じた役にも重なるコレクター趣味。)ポスタータイトル全部追うことができたらさらに楽しめそう。

「モダーンズ」でもみているものをびっくりさせるシーンのあった後、それが回収されるが、こちらの映画でもナンシーのしょっぱなの不可解な行動を一応腑に落ちさせるシーンが用意されていて、その辺の丁寧さに好感を持つ。

*1:モダーンズ - 日常整理日誌

*2:山田太一氏のドラマって常々思い切った跳躍があるのだけど、その跳躍がすらっといく時と跳躍への違和感がみているものに強い時とあって、それは、それまでの地ならし、あるいは、もう何でも起きたことは起きたこととして飲み込ませる役者の演技などにかかっているのだろうかなあと思っている

俺、つしま2

 

俺、つしま 2

俺、つしま 2

 

 写実的で芸術的な猫の絵と、人間の絵のいい加減さの落差ーまさに、「俺、つしま」の世界観とはそういうもので、人間が猫の表情をみて、猫ってこんなこと思っていそうだよなあという思う気持ちを突き抜けさせて作品にしたもの。1巻よりさらにロマン志向高まったような・・

モダーンズ

 

モダーンズ [VHS]

モダーンズ [VHS]

 

 twitterで80年代の映画の話になり、ロバート・アルトマンチームの、アラン・ルドルフ 監督の話が出てきた。ふや町映画タウンのおススメにも何作品も入っているのに、まだ一作もみたことがなかった。この映画は、敵役の ジョン・ローン が素晴らしい。ぐつぐつしたものを内に抱えるスタイリッシュな成金役。なんかしびれるものがある。美しい妻、お金のかかる絵画、崩さないスタイル・・彼が雇人に手伝わせ(ここがまたいい!)トレーニングしている時にかかる「フィガロの結婚」の「恋とはどんなものかしら」がまたいい。なんと雰囲気のある役者さんなんだ! 

<モダーンズ>歌劇「フィガロの結婚」 K.492/恋とはどんなものかしら(モーツァルト)

<モダーンズ>歌劇「フィガロの結婚」 K.492/恋とはどんなものかしら(モーツァルト)

 

 ヘミングウェイなんかも出てくるのだけど、1920年代のパリというと「ミッドナイト・イン・パリ」にも出てきたり、藤田 嗣治なども活躍していた頃だろうな・・にやっとさせられる粋な映画だった。

ウディ・アレンの映画でよく見かけるウォーレス・ショーン氏もご活躍。

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エンディングにアルトマンへの感謝も。