雷電

江戸時代の雷電 爲右エ門という力士の物語。若き宇津井健がとても好感のもてる感じで主人公をつとめている。とても素朴でまっすぐな魅力があった。体格も良い。

主人公たちが窮地に陥った時に必ず出てくる隼小僧、ねぼけなどのリリーフ要員がえらくかっこいい。

仁王さまの生まれ変わりといわれている雷電、仁王さまが出てくるシーンもほほえましさがあり、中川監督のあたたかさを感じ、監督の「エノケンのとび助冒険旅行」なども思い出す。

雷電の故郷で雷電生誕250周年の立派なサイトがある。さきほど書いた仁王さまの紹介もある。こちら

 

 

初春文楽公演

www.ntj.jac.go.jp

初春文楽公演

第1部 午前11時開演
野澤松之輔=作詞・作曲
山村若栄=振付
二人禿(ににんかむろ)

伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)
 竹の間の段
 御殿の段
政岡忠義の段
壺坂観音霊験記(つぼさかかんのんれいげんき)
 土佐町松原の段
 沢市内より山の段


第2部 午後4時開演
近松門左衛門=作
冥途の飛脚(めいどのひきゃく)
 淡路町の段
 封印切の段
 道行相合かご

壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)
 阿古屋琴責の段


今回一番心に残ったのは、「阿古屋」。文楽の阿古屋もお人形と楽器のシンクロ楽しいものだなあと楽しめた。テレビ大阪で鶴澤寛太郎さんが奮闘されている姿をみていたし、*1、おじいさまの寛治さんのことが好きだったのもあって。。がんばっておられるなあと親しみを持って拝見。
「阿古屋」では楽器演奏が要になるから、左遣いの活躍も大事となるということで、普段は黒衣の左遣い(吉田一輔さん)のお顔も主遣いの勘十郎さんと並んでみえて、これもとても特別感があってわくわくした。

大好きな近松の「冥途の飛脚」も、「淡路町の段」、竹本文字久太夫と鶴澤藤蔵の奥、名調子で楽しんだ。「封印切の段」では、竹澤宗助氏のギターのような、泣くような音色が印象的だった。

第一部に戻ると、「二人禿」はとてもお正月らしい演目。劇場に飾ってあるにらみ鯛や、餅花、そして演目のチョイスなど新春公演の華やぎって良い。「伽羅先代萩」では、可憐な娘役がいつもなんともいえない魅力の吉田蓑助さんが、栄御前という敵方の人間を遣われ珍しい。
「壺阪観音霊験記」。南大阪に住んでいた時、行った壷阪寺を思い出す。「さわいち目薬」というようなものが売っていたり、お里沢市が手ぬぐいでつながれて歩いている姿の絵などもみかけたり・・闘病ものって分野、家族が病気になってから、特別の思い入れでみてしまう。*2すっかり入り込みそして、満足を得られた。

☆今回で楽しみにしていたパンフレットの久堀裕朗さんという大阪市立大学大学院文学研究科教授の方の「ある古書店主と大学生の会話」が終了してしまい寂しい。

あゝ、荒野 後編

あゝ、荒野 後篇

あゝ、荒野 後篇

またまたとても楽しめた。前編からのうまい展開、どう決着がつくのかとずっと集中させられるし、甘くないけど、丁寧で決していやじゃない話の運び方、デリケートな表現。そしてどの俳優も素晴らしかった。主役二人はもちろん、高橋和也氏もから元気な魅力炸裂。菅田将暉がつきあう相手の自然さもすごい。
ところどころ原作者の寺山修司っぽい台詞もうまく散りばめられ、それがしつこくなくほかの台詞と溶け込んで。。そこもなかなかよかった。
モロ師岡つながりで「キッズ・リターン」のDNAも少し感じたり、でも圧倒的ないまの映画。

てんまると家族絵日記 5

発行元URESICAの紹介ページ

 

イシグロさんの、ネコたちや娘さんとの日常。もちろん愛情はあるんだけどおもしろがるという基本スタンスに彩られていて、潔くも面白い。

うちのネコもリビングにいるわたしたちの横を全速力で駆け抜けるのを繰り返すという謎の行動をするのだけど、イシグロ家の二匹もしているらしく。。それをうまくお話にしてあって、すごいな、と思った。

すごくウケたのは、こどもがロボットだったというこわい映画をこどもたちとみていて。。という話。こどもにもネコたちにもほんと自然にほぼ対等のたましいで接しているイシグロさんが楽しいしうらやましい。

この中に出てくる深夜におしゃべりしていたという仕事が仕上がらない友人の画家Hとはヒグチユウコさんのことだろうなあ。。

ふしだらな女

 

ふしだらな女【字幕版】 [VHS]

ふしだらな女【字幕版】 [VHS]

 

 

1927年のヒッチコックの作品。無声映画

こちらのtweetを拝見し、興味を持ってみてみた。

どこかの感想にも載っていたが、これを「ふしだら」というのはどうかという感じだったが、ヒッチコックの、ヒロインをいたぶるような気質は出ているなあと思った。「鳥」にも通じるような、都会の女がカントリーサイドでえらい目にあう、みたいな。。

あゝ、荒野 前編

 

あゝ、荒野 前篇

あゝ、荒野 前篇

 

 

 

寺山修司原作のものを菅田将暉主演でということでどういうものになるかと思っていたが、とにかく面白かった。寺山作品によくある母への複雑な思い、少年が自立するということなどのテーマがうまく今の時代のエンターテイメントとして調理されている。劇画かと思うような、刺激に満ちた展開。菅田将暉と年上の同輩ヤン・イクチュンの動き、表情のリアルなこと。どえらい環境からの殺伐としたスタートで、なおかつ、その辛さが身に染みる表現なんだけど、この二人とユースケ・サンタマリアの軸がしっかりあって、非情なようで、人間の匂いのする新宿という町をしっかり感じ、小さな太陽をみているような気持ちになる。地味な役をよくみている木村多衣が今回は少し違う顔も。

自殺防止キャンペーンというイベント、ものすごく戯画的であるけれど、序盤の人をのむテイストは寺山作品のようなものもあり、また主催者の痛々しさに三島由紀夫のことをふと思い出したり。。三島の文学作品群なしでの表層の出来事だけの一致でそんなこと思うのは失礼すぎるのは承知なんだが、なにか三島の出来事のあるつらさも表現しているように感じた。このイベントがらみで極端なアイコンとして出てくる山中崇氏、この人は「菊とギロチン」でもよいなあと思ったのだけど、なにかいつもひきこまれるものを感じる。

サラーリマン忠臣蔵

 

お正月にKBS京都で放映していたものを視聴。えっここで?と思うような、これからというところで終わるのだけど、続編があったらしい。それならわかる。二本見せる工夫かな。。

忠臣蔵ファンのサイト「くすぺでぃあ」にも歌舞伎の仮手本忠臣蔵をベースに上手に使っていて、話をよく知っているほうが楽しめるとあったがその通りで、おかる兄妹と勘平の仕事などサラリーマン社会にうまく溶け込ませてあったし、加古川本藏が血のあつい主君桃井のために吉良に賄賂を贈るくだりも、構図がもともとうまくサラリーマン社会にあてはまっているものだからとても自然でしっくりくるし、加古川志村喬が品のよい雰囲気で演じていて、やはり加古川良いよなあとなる。大石主税の婚約者は加古川の娘にはしてなく、別の風見鶏的な人物の娘にしてあった。その方がすんなりくるもんなあ。

堀部安兵衛を飲んべえのエレベーターガールにしてあるのもおもしろい。安平衛への興味が高まった。wikipediaによると中島そのみという方で、私の好きだったアニメ「ちびっこ怪獣ヤダモン」の声を担当されたのも彼女のよう!

三船敏郎が桃井なのは役が軽いように思ったが、続編で活躍するのかも。この映画での仇討ちはビジネスで行う気配だったから。

松の廊下もビジネスマンにふさわしい設計になっていて楽しめたし、歌舞伎の方でも女のトラブルをかませてあったのでそれを受け継いでいたけれど、企業ドラマとしてみているとこんなことで、とすごく思ったりも。