きっかけを失いつつ

映画や本、鑑賞し終わってすぐ感想を書かないもので書くきっかけを失ってしまっている。。とりあえず本日読んだものから。 

2020年3月に集英社文庫になったようだけど、もともとは2003年4月に集英社より刊行されたもので、三島由紀夫に関するところなどは、「すばる」2000年10月号に掲載されたものらしい。

 なんとも独特な表紙。美輪さんがインタビュー受けている映像はいつもこういうタッチだな。

川口松太郎作「夜の蝶」のモデル、「おそめ」というバーを銀座に出店した京女上羽秀さんの話が出てくるときいて読んでみた。けちょんけちょんに書いてあると教えてもらっていて、どういう風に出てくるのかな、と思いながら読んだら銀座の店々が暴利を貪るようになったきっかけを作ったと紹介してあった。美輪さんによると、「おそめ」はグラス一つでも、お客さんの虚栄心をあおり立てて、紋所と名前を入れてわざわざつくっていたとか。あおり立てといえばそうなのかもだけど、おそめさんの評伝*1を読んだり、地元京都でおそめさん行きつけの店に行っておそめさんの様子をきいたことのある自分には、おそめさんらしい心遣いとも感じられた。紋所、なんてところは権威主義の匂いがするけれど、行きつけのお店できいた、顧客へのおつかいものをお店の紙袋で持っていくのでなく、必ず風呂敷に包んで持参したというエピソードなどとも相通じる京女ならではの、心のつかまえ方を持った人だなあとは感じる。

スタートは美輪さんの得意とするような神秘的な体験話から始まり、目的であるおそめさんはいつ出てくるのか・・とも思ったのだが、身近に接した三島由紀夫の話など、ちょうど先日NHKの特集できいた話も出て来たりしたが、もう少し詳しく語られ、興味深かった。二・二六事件題材の「英霊の声」の話なども神秘的な語られ方がしていてちょっと緊張したが、読んでみたい気持ちにもなった。 

この本、下三分の一くらいが脚注欄になっている。仏教の説明などは知らないことだったが、だいたい出てくる話題は自分にとっては脚注を読むまでもなく身近な話。でも昭和の有名人たちのことなど、例えば今の20代~30代なんかが読むとしたら脚注で説明する必要があるのだろうな。しかも脚注読んでるだけではピンとこないことも多いのだろうな。字組も大きくとても読みやすい本。

 

下三分の一の使い方で思い出したのは東村アキコ氏の女性謙信もの「雪花の虎」。10巻で完結。 歴史の話が複雑になるたび、下三分の一くらいが歴史苦手なひと向けの「ティータイム」という手書きのコーナーになり、ものすごくかいつまんでおもしろおかしく上のストーリーが語られる。東村さん、よく自分をお団子頭のジャージ姿で表現されるが、勉強嫌いの子の塾指導とかうまそうなタイプにみえる。

 「雪花の虎」自体は終盤特にちょっとラブストーリーみたいな色付けの部分が多いかなと感じたが、謙信には関心を持てた。退屈させない技量は十分。