青い凧

この映画のことを話題にしている、淀川さんとおすぎさんの「おしゃべりな映画館 3」を読んでみたら、淀川さんは一緒に話題にされている「さらばわが愛、覇王別姫*1にくらべて、この映画の話法の地味さがちょっと・・という感じで、おすぎさんは、誠実に丁寧に国の歴史に翻弄された母親のことを描いているこの映画を評価されている感じだった。確かに、淀川さんのおっしゃることもわかる。(淀川さんの好みもあるし・・)男の子の語りで話が進み、彼の父と母の出会いから、国の方針に翻弄され母の三度の結婚・・そして、文革というストーリーで、主人公の男の子の日記を読んでいるような、自分の目の前でこういうことが起こって・・というミクロな視点に徹していて、淀川さんには、マクロな説明もほしいという感じだったらしい。また、「ここポイントですよ」とばかりの演出が全くない。でも後で思うとそこがこの映画の素晴らしいところだと思う。政治的には翻弄されることがあっても日々の生活は丁寧に営まれ、毛主席の整風運動で右派のレッテルを貼られた父親が強制労働キャンプに送られる前に、一生懸命豆炭の用意をしていたところや、新年のお祝いで家々で作った餃子を交換するところ、花火や提灯の美しさはとても心に残っている。
鉄頭という主人公は、なかなか骨のある子で、小さい時からやんちゃで親を困らせている。こういう子いるなあという感じ。そして、いかにも「鉄頭」という感じの育ち方をして・・という話だが、「良い子」を求めてしまう自分には、この子の子育て大変そう・・とも思ったりするのだけど、鉄頭は鉄頭らしい個性で生きていく、それが良いのだった。人生、一つ解決してもまた新たな問題が出てきて、そんな中でなんとかかんとかやっていってる母子・・こんなもんだよ、という感じでたくましい。(たくましすぎないところがまたリアルでいい)
暮しの部分がとても丁寧に描かれ、悲惨なことも起これども、生活の営みなど美しい画面が多々。花火やお正月の提灯など印象的。

青い凧 [VHS]

青い凧 [VHS]

  • 発売日: 1994/12/21
  • メディア: VHS

音楽も印象に残るのだけど、大友良英氏の映画音楽デビュー作とか。大友氏、どちらかと思えば、「あまちゃん」の音楽の方とのこと!