バクスター!

これも珠玉の作品の多いワイントローブ・ブリティッシュ・ライブラリーシリーズ。
ふや町映画タウンのおすすめ☆☆ (実は、けっこう・・おすすめ)作品。とてもよかった。

心がつぶれてしまいそうな時、どうにかしたいのにどうにもならない感じ、それをはたでみていてもできることには限界があると思ってしまう気持ち、なんだかそういうことが、とても切実に描かれていて胸が詰まる。だけど、陰惨な感じではない。
現実は苦い事もあり、楽しい思い出がより自分を追い込むこともあるけれど、その中で安直な答えが用意されるのでなくまず悩んでそこからどうにかするしかないというメッセージがおためごかしでなくて心地いい。

家庭に恵まれていないバクスター少年にとって心理的な面のサポートをすることばの教室の先生を演じたのは「摩天楼」*1をみたとき経歴を調べてその数奇な人生に驚いたパトリシア・ニールかな・・とてもコクと味のある演技。甘い言い方をしないけれど、実のある感じでとてもよかった。彼女が人生から得てきたことが画面ににじみ出ているように思った。
そして、少年にとって疑似家族のようなあたたかさを与えてくれた女性はブリット・エクランドという女優さんだろうか・・ボンド・ガールだったり、いろいろな人と浮名をながされたようだけど、その華やかさがとてもチャーミングだった。
彼女とフランス人のボーイフレンドとともに、少年が打ち解けるシーンで出てきたのが
アステアの「I won't dance」(「ロバータ」より)

ディートリッヒの「Falling in love again」(「嘆きの天使」より)

「ブロードウェイによろしく」

などのナンバー。
どういう人たちかというのをうまく表現しているし、映画の深みになっていていい感じ。

少年が少しだけ交流する少女の部屋のモビール、飾ってあるハンフリー・ボガードミック・ジャガー、レッドフォード、W.C.フィールズ(チャップリンと並び称された喜劇王らしい)と並んで猫の写真、飼っている犬のフェルドマンという名前(きっと意味があるだろうにわからないのが残念。)、ちらっときいているジェリー・ルイスの番組、建築系の父の趣味と思われる聖堂のような踊り場、前述の言語の教室の先生の部屋の飾りなど空間や音での表現も心に残る。

バクスター! [VHS]

バクスター! [VHS]