ハクソー・リッジ

信仰からライフルを持たずに衛生兵として沖縄戦で働いたデスモンド・T・ドスという実在の人物を描いた映画。メル・ギブソン監督作品をみたのははじめてだけれど、仄聞する信仰心を強く感じた。舞台が沖縄という事で複雑な気持ちになってしまう部分はある。
冒頭兄弟喧嘩から人の命を奪うかもしれないことの恐怖というのが描かれそこから彼の信念が描かれるのは納得がいく。軍隊に入って、上官から仇名をつけられたり、キビキビを徹底させられる「フルメタル・ジャケット*1みたいな生活の開始。その中で「ライフルは持たない。安息日には休む」という信念を貫く彼。そんな彼に対して部隊内からいじめなどもあるが、「良心的兵役拒否」ということに対して、それなりにちゃんと対応する上官。映画の中でも、「ライフルを持たないならなぜ軍隊に入った?」−「男として戦場に貢献せねばならないから従軍する。だけど攻撃はしない」という意見を通す彼。
ライフルを持たないという彼の信念は徹底していて、試験にパスする手段として、というようなことさえ拒否し、軍法会議寸前まで行く。周りの人の尽力でそれは免れるが、「戦争というものはむなしいものだ」と第一次世界大戦で身に沁みている父と彼では心の差がある。(そんな父だけど家では絶対君主的なところがある。)
集団圧力に屈しない姿、起きてしまった以上はそこでベストの振る舞いをするという考え方は納得できるし、戦場でのチームとしての行動、瞬時瞬時の判断が命綱になるというところは、組織論的に堪能したが、軟派な意見の付け入る隙もない空気には少々圧倒された。

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公式サイト

町山智浩氏による解説