志村ふくみ 母衣(ぼろ)への回帰 

京都国立近代美術館にて 3/21まで
展覧会概要 

展示物の中で特に好きだったのが、春夏秋冬の小裂帖と、雛形。モダンで和菓子帖をみているような楽しさ。そして、「梔子熨斗目」というのも、色合い、そして、雨のように繊細な縦糸が素敵で、スタイリッシュで何度もみてしまった。
小裂は、ほぼ日で展覧会をされたときも取り上げられたよう。ほぼ日の記事に、民の普段着として織られてきた紬の着物を芸術に高めたという話が出てくるが、なるほどそういう風に民藝の考え方ともかかわりのある方で、会場にも富本憲吉の作品や芹沢硑介装丁の美しい「工藝」などが展示されていた。また、4階のコレクション・ギャラリーの方でも民藝関係の素晴らしい展示が並んでいた。(芹沢さんの着物、富本憲吉の白磁、黒田辰秋の火鉢など存在感があってかっこいい作品。)
ほぼ日の志村さんの記事の中で志村さんの本の話が出てきて、求龍堂という出版社の話が出てくる。求龍堂ノンタンの絵柄の「おみちゃんさっちゃんのこどもえじてん」というものを出版していて、とても丁寧にこどもがわかるように言葉の説明がしてあるのがすてきな本で、またそれを今はなき「河原書房」という日本の伝統文化関係の本を集めていた品の良い本屋さんで購入したもので「日本の良心」のようなものを感じてしまう。(「河原書房」については、三月書房さんのブログに記事が。。本当に河原町通、昔はもっとよかったのになあ・・)

おみちゃん さっちゃんの こども え じてん

おみちゃん さっちゃんの こども え じてん

奇想天外! 浮世絵師 歌川国芳の世界

JR京都伊勢丹にて。
ポスターに惹かれて行ってみたがとても楽しめた!題材自体もおもしろいのだけど、その構成の仕方も、細かいところも凝っていてどの作品もすごい!かっこいい。
歌舞伎題材の猫ものとか、最近歌舞伎をみはじめた猫好きの私にはダブルでうれしい!

前に芸艸堂の作っている歌川広重のかわいらしい猫シールを買ったことがあって(このページにも載っている図柄)、同じ歌川?という感じだったのだけど、どうも同時代人で同じ歌川派らしい。(こちら参照。)そして広重は昔安藤広重という呼び方をしていたなあとwikipediaを読んで思い出した。

猿之助への軌跡展 

京都造形芸術大学で。紹介サイト
猿之助さん、こちらの春秋座の芸術監督に就任されていて、また、過去春秋座でのだしものも多いんだ。今度いってみたい。
義経千本桜・川連法眼館(通称・四ノ切)」の稽古から本番までを収めた45分のドキュメンタリーフィルム「KABUKU」よかった。ラストシーンでなぜか涙があふれてしまった。精進が伝わって胸をうった。たしか千本桜で猿之助さんが狐になっている舞台録画してあるのでちゃんとみよう。キツネってバレる前の微妙なキツネっぽさとかもおもしろい。

カリフォルニアデザイン 1930-1965

カリフォルニアデザインという言葉だけだと、そこに自分の好きなイームズだとかソウル・バスのイラストだとかが入っているという認識がなくて・・展覧会概要をみてはじめてこういうのがカリフォルニアデザインなのね!知らなかったけれど好きなものじゃないか!と勇んで出かけた。
たとえばバービーと紙製のドールハウスのすてきな色合い。ロシアのお菓子がはいっているかのようなドーム型の百貨店のプレゼントボックス。カードで作ったこどものおもちゃイームズ製)。子供の頃夢の中に出てきたような、コージーな喫茶店風のキャンピングカー。イームズのコレクションもなんだけど、メキシコやアジアを感じさせるデザインが好まれたのもこのころらしく、自分のイメージの、「アニー・ホール」で描かれたようなマテリアルすぎるカリフォルニアではなく、もっと素朴なよさがある。

紹介されていたソウル・バスのタイトルがかっこよかった「或る殺人」、みてみよう。マーティン・スコセッシのものとかもいろいろタイトルつけているらしい。研究しよう。ソウル・バスのタイトルをまとめたものはここ

館長庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技

今週の火曜、水曜(14,15)と渋谷PARCOの三谷文楽「其成心中」をみに大学生のこどもたちと上京。
前泊したので、東京都現代美術館の「特撮博物館」へ。

特撮をつくりあげた人たちの仕事ぶりを庵野秀明が丁寧に解説してくれるもの。展示物にそえられた「庵野のひとこと」のような欄に奥さんの安野モヨコさんのイラストが描かれているのが楽しい。先月、息子の大学の大衆史を聴講し、「ゴジラ」が作られた背景*1などについてきいていたところで、またかねがね佐々木守氏などが脚本を担当した「怪奇大作戦」などに流れる重い思想性にうたれもしていたのだけど、ウルトラマンのデザイナーの成田亨氏の、デザイン単体でおもしろいのではなく、どういう風に生きてきて、こういう経緯のある宇宙人だからこういうデザインという、生き方を反映したものでなくてはよいデザインは生れないという主旨の文章にうたれる。特撮とはそういうところから始まったものなのだな。。
円谷英二の紹介で、いまさらながら「BILLY BAT」9巻に出てくる円谷氏がモデルの明智監督とのぴったりの照合にあらためて感心。「BILLY BAT」にも出てくるピアノ線をうつさないためさかさにつるした飛行機の工夫も紹介されていた。この勢いなら「BILLY BAT]に出てくるような謀略も説得力がある。

BILLY BAT(9) (モーニング KC)

BILLY BAT(9) (モーニング KC)

特撮で作った街角。
美術館から外に出てもまだ特撮の中にいるようだ。。巨神兵の映像をつくるためのうちあわせ中のデザイン画などからも制作の現場の細かいやりとりが伝わってきたし、ウルトラマンの点滅ライトに至るまで制作に携わった人々、現場を丁寧に紹介する楽しい展覧会だった。

*1:初代ゴジラにかなり関連付けてある大森一樹監督の「ゴジラVSデストロイア」のストーリーの、いまきくと本当に驚くほどの原発とのつながり。あるいは、加藤典洋氏の「さよならゴジラたち」など南国の英霊との関連の分析。

川西英コレクション収蔵記念展 夢二とともに


先週の土曜日川西英コレクションに。夢二のコレクションも小さいものやセノオ楽譜、千代紙などに惹かれたが、川西さんの木版画仲間同士の「作品交換」として集められたのでは、と記されていた前川千帆さんという方の温泉シリーズなどが現代にも通じる若々しいかわいらしさでひどく惹かれた。新聞でちらりとみて気になっていた川上澄生さんの作品もみられた。田河水泡が漫画家になる前の高見澤路直名義の作品もよかった。展覧会は25日まで。

美術館のすぐそばの冬の図書館。なんか空気が澄んでいて心地よかった。

杉浦茂101年祭


京都国際マンガミュージアムで「杉浦茂101年祭」というのをやっていて、前からあのかわいらしくもとぼけたタッチが気になっていたのでみにいく。杉浦さんの原画も展示されていたが、145名もの漫画家やイラストレーターなどのトリビュート作品群に、それぞれの個性があふれとても楽しかった。久住昌之さんは、「かっこいいスキヤキ」時代から独自の視点が気になって仕方ない方だったが、ほんとに久住さんらしく、他の方は杉浦さんのキャラクターを使っているものがほとんどなのに、杉浦さんご本人をモデルにした作品を作られていたりしておもしろい。あと花くまゆうさく氏。本は読んだことないのだけど(「東京ゾンビ」は映画のみ。)ほんわかしたあのタッチとペンネームの中にあなどれないパワーと毒を感じ、いつかちゃんと読みましょうと思っているのだけど、やっぱり、杉浦さんへの敬愛に満ちた作品をいつものあのキャラクターで描いておられますます好きになった。あと横尾忠則氏、和田誠氏、丸尾末広氏。杉浦さんのあのほんわかした感じをいつものそれぞれのスタイルで表現していて楽しい。朝倉世界一氏の作品もとってもかわいらしかったし、松尾スズキ氏や枡野浩一氏との仕事だったらクールなイメージがある、河井克夫氏の作品も杉浦さんへの敬意があふれている感じでほほえましいといったらいいのか、とにかくとても好感をもった。林静一氏も、すごく枯れたタッチでさらさらと・・と、なるほど今はこういう作品・・という感じだったし作家の個性を楽しめるおもしろい展示物だったなあ。