旅路の果て

 

前から名前だけはきいていたが。。とても堪能した。

役者ばかりの老人ホームのはなし、まさに倉本聡のドラマ「やすらぎの郷」のオリジナルといっていいのではないだろうか?

旅回りの舞台の慌ただしさ、舞台の表と裏の温度差の面白さからはじまり、そこの老俳優、ルイ・ジューヴエ扮する自尊心の強いプレイボーイが見栄のはった嘘をついてホームに入居するところから話が始まる。

やすらぎの郷」でも皆が集まるバーやそこの若い女の子の描写に力を入れてあったが、こちらにもカフェや女の子。そして事務局の苦労など、つい「やすらぎ〜」の共通点をみつけ対比してしまう。役者に譲られる遺品というエピソードなども倉本聰はうまくオリジナルを翻案しているなと。

カフェの女の子にふりかかる出来事、これは全く「やすらぎ〜」(確か続編)の方では事件のための事件のようにみえ、いただけなかったのだが、過去の因縁をきちっと絡ませたこちらの方はちゃんとしたものだった。

役者っていうのは、のんきで我儘な存在で。。事務局の人たちは大変である。いつまでも大人にならない筆頭格がミシェル・シモン。悪ふざけが過ぎるが、そんなところからこぼれ出る良い話も。この辺の組み込みが皮肉なような面白いような感じで好ましい。

ヴィクター・フランセン扮する元役者、この人は一番まともで、ルイ・ジューヴエに過去に女をとられ、そのスキャンダルを皆が知る中、きちんとした姿勢で生きていこうとする高潔な人物で、風格もあるのだが、カフェの女の子なんかにしてみれば彼はなんだか辛気臭くルイ・ジューヴエみたいな色男の調子のいい様子に夢中。そんな不遇な彼がラスト近くでいうセリフが調子者ミシェル・シモンの滑稽さを際立たせ、苦笑を誘いつつ、役者とはということに迫る。皮肉なおかしみの中に真実を紛れ込ませるデュヴィヴィエのこの話法、「舞踏会の手帖」*1や「運命の饗宴」*2に引き続き、自分は好きだなあと思った。