ゴランノスポン

そうそう町田さんは時代物を咀嚼して楽しませてくれるのが上手な人だった・・と、一番最初に収録されている「楠木正成」を読んで再確認。今まで、江戸時代から持ってきているような雰囲気がする作品が多かったので、「楠木正成」や、さらに遡っての「末摘花」は新鮮。橋本治氏の「窯変源氏物語」で大好きだった頭の中将もまたまた魅力的だったし・・町田さんの古典咀嚼シリーズ読みたい。
楠木正成」に出てくる

僕は、その時点その時点やらなきゃいけないことをただやっているだけですよ。

(P25)というせりふ、なんだかとっても潔く胸に響く。

表題作の「ゴランノスポン」や、「一般の魔力」など現代ものはほんと辛辣。的確な描写。傷のなめあい、偽善などへのすごい批判。おもしろいんだけど、突き刺さる。
「尻の泉」は、「宿屋めぐり」的な、悲しみと滑稽さと、運命を受け入れる人間の大ドラマとが、地にまみれて描かれていてなんともいえず心が動かされた。
神々しくも可憐な感じの奈良美智氏の表紙(「Atomkraft Baby」という作品らしい)はこの本の中の楠木正成や「尻の泉」の主人公を思わせる。しんどい試合に赴く雄々しさ。かっこよさ。

「先生との旅」は楽しめる短編。細かいことを考えすぎて必死にからまわり、という町田さんの本によく出てくる好きなタイプの主人公の物語。共感。苦笑い。落語っぽいテイスト。あ、他の作品も落語や講談にしてもおもしろそう。

ゴランノスポン

ゴランノスポン