荒木飛呂彦の超偏愛!映画の掟

おもしろい語り口。荒木氏は映画で自分をひきつけるものを分析し、みたことないものにもわかりやすく説明してくれるのだけど、その文章がなんとも魅力的でエロチックサスペンスの棚に並んでいるものをバカにするな!など、ユニークなポイントでどんどん読ませる。
全編こまかい分析のおもしろいこと。映画をみてからもう一度読みたくなる。「96時間」の冒頭シーンのリーアム・ニーソンの時代遅れ感。「ファーゴ」の犯人たちの雑ゆえの怖さ。この説明がうまい。映画全編に漂う無感情な空気。「ファーゴ」では、無感情ということをそう気にせずみていたけれど、その後のコーエン兄弟の作品「ノー・カントリー」とか本当に無感情の怖さが描かれていたし、好きだった「バーバー」なんかも、無感情の不思議な魅力の映画だったかも。
結局秘密パーティの話でしょ、なんて思ってみていたものでなんだかピンとこなかった「アイズ・ワイド・シャット」なども、さまざまなシークエンスを紹介し、都市伝説の物語とする荒木氏のものの見方が加わると途端に興味惹かれるものに。
ジョジョの奇妙な冒険」は、かなり壮大なスケールで描かれている魅力的な話ということ、をきいたことがあるのだけど、その基礎が感じとれる。p205に写真掲載されている映画の分析ノート、もうこういうの作る人に私は弱くて弱くて。
この本の前に「荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論」というのも書かれていて、そっちには、なんともやりきれないがひきつけられた「ファニーゲーム*1なども載っているらしい。あれをホラーの中に入れるのもおもしろいし、ぜひ読んでみたい。