市川崑監督、谷崎潤一郎原作。1959年製作。ずっと前にwowowでやっていて、その時は古い日本映画をあまりみたこともなく、偶然画面にうつったのをみた感じだったのですが、なんだかすごくひきつけられて、今思えば、あれが「古い日本映画っておもしろいのじゃないかな?」という気分になったはじまりだったかも。その時はきちっとみなかったので、結局どんな映画だったのか気になりつつも、中途半端にみたもので「いつかまたテレビでやるかな。。」というけちくさい気持ちで今までビデオを借りなかったのだけど、いくら待っても放映されないのでいよいよ借りてみたらこれがおもしろい!

出て来る人出て来る人なんだかいけすかないのだけど、なんかそのいやな感じがおもしろくて、途中でやめられない。今の日本では考えられないほどの濃厚ぶり、魂胆のみえみえぶり。

先代の中村雁治郎が骨董の目利きとしては優秀な大家、でも老いへのおそれをもち、そこから若い妻への隠微で屈託した思いをぶつける役回りなのだけど、ほんとみっともないシーンがいっぱいで、リアリティもあって、それを堂々と演じきられているプロとしての凄みを感じた。以前、先代雁治郎の話が出たとき「色気がありすぎる感じで敬遠していた」という意見もきいたことがあるのだけど、それを納得させるような迫真のひひじじいぶり。。

撮影は宮川一夫カメラマン。部分部分白黒になるような画面とか影の使い方とかすごいなと思うところが多かったし、いろいろな画面の構図もきまっている。あと、これは市川崑監督の特長かと思うのだけど、場面の切り方、ストップモーションやコラージュの使い方もいい。大名作!という感じでもないのかもしれないけれど、なんかどの人もなぁ。。という冷笑的なおかしさや哀しさもあって、みている間中楽しめる映画だった。

京都が舞台で、京都の市電や市バスのバス停などの風景になんとなく見覚えのあるものも出て来るのもたのしめた(確認はとれていないけれど、これは東天王町の交差点?と思うようなところがでてきた。)し、仲代達也も、は虫類みたいでおかしかった。京マチ子の人工的な感じのお化粧と水をはじくような肌も堪能したし、北林谷栄の演技ももうそこにいる京都のおばあさん、という感じのナチュラルぶりが凄い!みるべきポイントの多い映画だった。

鍵 [VHS]

鍵 [VHS]