5 five〜小津安二郎に捧げる〜

アッバス・キアロスタミ監督作品(2003)
言葉のない映像と音だけの世界。波にさらわれ変形していく木切れ、それぞれに生活し、ちょっとずつ関係を持っていく人や犬、海鳥の様子を眺めている海辺の風景、かえるのような鳴き声が響き合う夜の水辺・・そして朝。時間の流れを大きくとらえる視点、時は不可逆なものというような情景に私は小津安二郎に捧げるというタイトルらしさを感じた。
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放課後

アッバス・キアロスタミ監督(1972)
14分間の中にキアロスタミ監督のエッセンスがつまっている。まず映る学校で失敗してしまった少年の顔の大写し。この表情をみただけでキアロスタミ監督だ!とうれしくなる。もうここで観る人の心をつかむ凄さ。
路地と犬、長い丘・・思い詰めた気持ち・・懐かしい文字が記された友人の手紙のように眺めていて嬉しい。twitterで、キアロスタミ監督のおかげでイランに住む人のことを知ったと書いてあるのを読んだけれど本当にその通り。イランへの扉を開いてくれたのはキアロスタミ監督だし、他国との交流ってそういうことなのだなと思う。
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2000年のジョナス(ジョナスは2000年に25歳になる)

1976年 アラン・タネ―ル監督作品
1968年の5月革命を経た後の、そこからどうする?という頭文字Mの様々な人々のそれぞれの気持ちを描いた映画。一番好きだったのはスーパーのレジでのごまかしで老人たちをこっそり応援しているレジ係ミウミウとおじいさん(レイモン・ビュシェールという俳優さんらしい)の交流のシーン。

いつもお芝居ごっこみたいなのをしている二人が、刃物振り回すお芝居からダンスにつながるところなどもとてもチャーミングだし、ミウミウの歌声も幸せな気分になる。
おじいさんは赤いスカーフが印象的。二人で話している台所の後ろにもいつも赤いヤカン。ラストのジョナスの後姿もかわいい赤いズボン。まるで小津安二郎作品のように、赤い刺し色が印象的な映画だった。
そして、今の現実はこうだけど、それぞれの夢をつなげて力として統合したいと夢想している寒空の主人公の姿が、ちょうどいい頃合いで心に来る。作られたのは1976年だけど、今日的な映画でもあった。


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左、おじいさんとしゃべっている教師役の俳優さん(ジャック・ドゥニ)は三谷幸喜氏似。