女優ナナ

昨年秋に観た映画「SING」*1に元女優のナナなる大金持ちの老嬢が出てきて名前だけの知識である「女優ナナ」を知りたくなった。手っ取り早いところで映画にて鑑賞。

 

観たのは、ジャン・ルノワール監督版(1926)とクリスチャン=ジャック監督版(1955)。

 

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ルノワール版、2時間越えのバージョンについても検索したら出てくるのだが、私が観た東北新社から出ていたビデオは101分。ナナになったのが当時の妻カトリーヌ・エスラン(へスリング)。監督の父のオーギュスト・ルノワールの裸婦のモデルにもなっている人物とか。

ルノワール監督の映画をそんなに観ているわけではないが、物事をさらっと面白く描写するイメージを持っている。滑稽とも思えるような欲望にかられた人間のエピソードを描いていくところは楽しめたのだけど、全くの無声で、モノクロ、俳優さんになじみがないもので、属性が似ている人物は少々区別がつきにくく(もしかして短いバージョンで、どこか省略があったせいか?)結果少しもやっとした感じで終了してしまった。

 

次に観た1955年版

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こちらは、ナナにぞっこんになるミュファ伯爵をシャルル・ボワイエが演じ、元々は堅物なのに踊り子のナナに入れ込んでしまうその心のうちの跳躍、彼の考えている愛情とナナや奥方の思いのずれが観ていてとても分かりやすく表現されていた。

ナナを巡る他の男性の輪郭もとても明瞭で、それぞれにこの人ならそうだろうなという説得力があり、全くもって退屈しない。

美術も凝っていて、ナナの衣装もたのしめる上にミュファがナナのために建ててあげる豪邸とはいえ趣味が悪い調度品なんてところにもミュファ伯爵のまじめな野暮天ぶりが表されていたりしてとっても面白い。クリスチャン=ジャック監督作品やシャルル・ボワイエ出演の他の作品も観てみたくなった。

 

と、ここまで朝に書いてなんとなく一日「ナナ」の余韻に浸っていたのだが、この二作品、大いに違っているのがラストで、ケレン味溢れていてなんだかオペラみたいと思ったのは55年版なんだけど後からじわっとくるのは、ルノワール版かなあと思ったりもしている。愛情について静かにかかれた絵本を読んだ後のような感慨もあるなあと。