暴力脱獄

ピーター・バラカンのFM番組を聴いていたら伊集院光のゲストの回で「暴力脱獄」の話が出ていた。伊集院光が観たことのない映画をゲストに紹介してもらい、観る前、観た後にトークをする番組があったそうでそこでバラカン氏が紹介したのがこの作品だったとのこと。本にもなっている。

 

番組はこちら(映画の話は14分54秒くらいから)。この回に関しては2022/8/14までだけの限定配信とのこと。ポッドキャストでは流すのを省略されていたが主題曲 が紹介されていた。

 

暴力脱獄

暴力脱獄

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アコースティックで叙情的な曲がポール・ニューマン演じる節を曲げないが不思議な愛嬌もある主人公ルークにぴったり。ごく要所でしかかからないのがまた効果的。音楽の力を強く感じさせられ、心動かされる。

原題は「Cool Hand Luke」。バラカン氏もラジオで話しておられたが邦題から受けるアクション的で猛々しいものでなく丁寧な表現の人間ドラマ。

彼は武勲を挙げた人間なのに降格して除隊したという経緯が冒頭刑務所に入所するときさらっと読み上げられる。理由は具体的に描かれなく、その横顔は訪ねてきた余命いくばくもない母親の言葉などから類推するしかないというような寡黙な表現、それが彼の生き方とぴったりあっていて、きちっと心に届く。プロフィールでなく、いまここでどういうことをする人間かということで観ている者も作品内の監獄の仲間も彼を理解する。

手のうちは空っぽでも節を曲げない人間、それゆえ酷い目にもあい、それに耐える姿をヒロイックばかりじゃなくものすごく人間らしく、ほんとバカだなあ、みたいなエピソードも交えて描いているところにこの作品の魅力がある。ポール・ニューマンの代表作としてこれを選ぶ人が多数なのもよくわかる。完璧じゃなく、劇中「あいつは根性だけだ」といわれるようなその性根の輝いていること。みているこちらも自然に自分の社会で納得のいかないことに対してどう向き合うか、心の中のルークならどう振る舞うかということを意識させられる。余韻を残す良い作品。

牢名主的なジョージ・ケネディが1967年のアカデミー助演男優賞受賞。彼がニューマンに心動かして表情に変化が表れるの印象的だったものな。

暴力的な監獄のボスのサングラスの演出も心に残る。