先日佛教大学のオンラインセミナー「建築から読み解く歴史」という講座の「京都の文化サロン フランソア喫茶店」を聴講した。四条の老舗喫茶フランソアの創業者の娘さん 今井香子さんのお話を京都市京セラ美術館ディレクターで学芸員の前田尚武さんが聴かれる形式のもの。
↓こちらの「フランソアについて」というところでもざっくりとは触れることができるけれど、
臨場感あふれる形でフランソアの建物、(洋館風だけど日本家屋をそうみせているだけで二階は純日本風畳の部屋でドームを和室から吊っているとか)や、そこに集う人々の話をきくことができた。
特に、HPにもこの↓ように載ってはいるが
1947年、営業を再開し同時に南側の旧店舗に「ミレー書房」を開き、一般には入手困難だった洋書や思想・哲学書を販売しました。1950年には書店部門の担当者が独立して「三月書房」を創業し、南側店舗も喫茶室へと改装されました。
寺町の「三月書房」とのかかわりは私にとってははじめて知ることだった。三月に開店したから「三月書房」という話も出て来たが、こちらのインタビューにも載っている。(三月書房も2020年末に廃業。今、週休7日と貼りだしてある。)
「ミレー書房」という名の書店、昭和40年代に「フランソア」の場所でなく、河原町通からすぐのところにあったのを自分は記憶しているのだが、三月書房のブログにも無関係のものとして紹介されている。(こちら)。
おはなしの中で出て来たのが森まゆみさんの「暗い時代の人々」。
戦時中斎藤雷太郎という役者さんが反ファシズム統一戦線の小さな新聞「土曜日」を出していたのだが、それを支えていたのがフランソアということで、鶴見俊輔氏に、森まゆみさんの出してこられた地域誌「谷根千」とも重なるところがあるからフランソアについて書いてみたらと出版社を通して声をかけられたのだそう。
フランソアと「土曜日」のことは京都新聞の連載で少し読んでいて、↓の本が出た時も購入したのだけど積読になっていた。
「暗い時代の人々」の中ではフランソアの創業者立野正一と斎藤雷太郎のことが1章割いて書かれていて今回その章はちゃんと読むことができた。娘さんの今井さんのおはなしの中で淀川長治も「週刊土曜日」に映画の記事を載せたことがあると出て来た。
美術的なことでは、↓の写真にも写っている紋章は「フランスか何かの貴族の紋章を模した」、ステンドグラスは北側はs16~ 写真に載せている南側はs25年から高木四郎という須田国太郎のお弟子さんのデザインでできた、現在は左のメニューだけどその前は昭和9年に藤田嗣治が作っていて今は店には一枚だけ、三高会館にも展示してあること・・*1等々、まとめきれないほどの人脈が登場した。
フランソアには、モナリザの複製画があり、あまりにメジャーすぎ、複製複製したものをなぜ飾ってあるのかと思っていたが、関西に二枚だけあるメディチ家が複製したものということだった。
殿山泰司の彼女がフランソアの女給さんだったので、新藤兼人の映画「三文役者」にもフランソアは出てくるのだけど、HPによると、瀬戸内晴美の「家族物語」という本にもフランソアが出てくるらしい。
ドナルド・キーン氏との関わり、文楽人形スケッチ画展・・ちょっと自分に関心のある項目だけでも枚挙にいとまがないのだけど、まとまらないのでこの辺で。
最後にひとつだけメモ。森さんの本によると、「土曜日」の斎藤雷太郎について、伊藤俊也監督が『幻の「スタジオ通信」へ』という本をまとめているらしい。
著者その人の思想や屈折、映画界に関する膨大な知見が入り、やや読みにくい
と評されているのだけど、「誘拐報道」「花いちもんめ。」*2と観てきて、そのあと東条英機の「プライド」を撮った監督かと気になっているもので、そのやや読みにくいといわれている本も気になっている。