日本人の勲章

 

 

第二次世界大戦中の米国の日系移民の立場が物語の核。倉本聰脚本実相寺監督のドラマ「波の盆」*1でも日系移民の苦悩を移民家族自体から描いていたが、こちらは、日系移民をみる米国民のこころということに焦点があてられている。

戦後、西部の田舎町に片腕を失ったスペンサー・トレイシー扮する男が降り立つ。すごくマッチョな町で、地元の声のデカい男の力による支配が横行している。スペンサー・トレイシーは彼の命を西部戦線で命にかえて救ってくれたこの町出身の日本人兵士の家族に会いに来たのだ。

何かを隠蔽しようとし、長いものには巻かれておきたい町の空気。しかし、良心のうずきを感じているものもいる。スペンサー・トレイシーの粘り、働きかけ。そこから、浮かび上がる現代にも通じる、大義さえ与えられればそれまで同じ共同社会で暮らしてきた無辜の人間に何をしてもいいのかという問題。そのことを命を救ってくれた男の「勲章」を届けるというわかりやすい形でドラマにしている。

孤軍で乗り込む、しかも片腕しかない設定のスペンサー・トレイシーをハラハラと見守る。彼のアクションシーン初めて拝見。「いま」ともつながるテーマが、サスペンスやアクションなどの色彩もつけながら巧みに描かれている。