けものみち

 

政界フィクサーに女を提供しそこにたかる人々の様子などが松本清張タッチで容赦なく描かれ楽しめる。フィクサー自体が表舞台でなく、裏側で物事を操る存在と思われるが、さらにそこを動かすべく駒をすすめる伊藤雄之助。自身は女に溺れたりすることなく分をわきまえ影の存在のままことをすすめているところに、池部良が演じる実働部隊の色男なんかより妙な魅力を感じる。小林桂樹演じる刑事の冴えも大したもので一見地味にみえるこれらの人々の様子がこの物語を牽引する。

松本清張のファンであるみうらじゅんがかねがね清張の作品は自分が調子に乗っているなと思う時に戒めとして読むと効くというような話をしていたが、この映画にもそんな落とし前要素も用意しつつも最後の最後まで、で、誰が生き残るんだと楽しめるように作ってある。

自分にはお味噌汁の宣伝のイメージの強い池内淳子が、やむにやまれぬ生活困窮から裏の世界に入りだんだん変化していくさまを巧みに演じている。

 

2022/3/19 追記

コメント欄で話が出て、NHKで82年にNHKで放映した 和田勉演出、ジェームズ三木脚本のテレビバージョンも鑑賞。音楽にメリハリをつけたなかなか派手な演出。ラストは映画と少し違う。(映画の方がクールで好き。TV版はロマンチック。)テレビバージョンはフィクサー役が西村晃西村晃が好きなので、力のあるものにいいように使われる二番手、三番手の悪みたいなイメージの西村さんが影の大物で妙な嬉しさ。

フィクサーの邸宅の庭のシーンはは松本清張宅と知り驚く。

オリンピックの少し前のことという設定なのだけど、ちょっと下山事件を思わすような描き方の事件が出てくる。

女性をうまく仕立て上げて・・という話、「日本の首領」に出て来たデヴィ夫人がモデルになったようなエピソードがちらっと頭をかすめた。

テレビ版の刑事は伊東四朗。映画版での小林桂樹よりこの刑事は自然だった。(映画版ではちょっと個人的な関心を女に持ってしまうような設定だったが、テレビ版の方がなんやかやあっても基本仕事に徹していてすっきり。)