二十四の瞳

 

木下惠介生誕100年 「二十四の瞳」 [DVD]

木下惠介生誕100年 「二十四の瞳」 [DVD]

  • 発売日: 2012/08/29
  • メディア: DVD
 

「観た気になってしまうともったいない映画」と映画人である先輩のK様に教えていただき急いで鑑賞。

小学生の時原作を読み、冒頭のかわいらしい感じが途中から戦争を経て胸苦しくなり思ったより辛い話だった・・という印象を持ち、映画も観ないでここまで来ていた。

原作で記憶にあるのは、戦争を経て「二十四」の瞳ではなくなること、そのことに寂しさ厳しさを覚えていただけだったのだけど、還暦近くなって映画を観て、この話の始まりが昭和三年、自分の母が一歳の時からスタートすることに気がつき、こんなモダンな先生も島の学校に存在するような世相だったのに、時代が進むにつれ教え子が戦死するのは嫌だというような今きいたら至極当たり前の発言をしてもにらまれるようになり、教師一同委縮するようになって・・と、父母のアルバムを見ているような気持ちの鑑賞になった。

木下恵介作品、理想だけじゃなくて生活を回していくことへの視点がある気がする。「この子を残して」*1でも、永井博士の生活を支えたお姑さんの描写が心に残ったし、「楢山節考*2でも、田中絹代演じるおりんおばあさんの生活技術の確かさに目がいった。さらにはテレビ木下恵介アワーの「三人家族」でも、男所帯で家事を引き受ける弟あおい輝彦の様子がとてもきちんと描かれいてると思っている。この映画でも、それぞれの生徒の事情というものがとても丁寧に描写されていて、家を支えるために学業や才能を犠牲にせざるを得ない、でもそうやって生きていく姿を、みているものが同級生感覚で見守るようなつくりになっていた。苦労なしの人生なんか誰もない、それを幼い時のように苦く感じるのでなく、そういってもらってありがたい、みたいな気持ちになって鑑賞した。生徒たちが必死で見舞いに行った大石先生のおうちのきつねうどんのシーンのあり方もすばらしかった。

二十四の瞳」、青空文庫で原作が読めるようになっている。(こちら)。映画で笠智衆が演じていたおとこ先生、原作でも面白い味わい。映画をみてからだとさらに楽しめる。わたしが小学校の時好きだった言い回し「ぴくに行く」(ピクニックの意で使われる)も再確認でき嬉しかった。

そうそう映画で大石先生の夫は天本英世氏。「仮面ライダー」の死神博士で認識し始め、その後スペインへの造詣の深さなどから畏敬の念を持つようになった俳優さん。

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