NHK「100分de名著」ブックス ユゴー ノートルダム・ド・パリ 大聖堂物語

 

 

テレビの「100分de名著」でこの本の話をきき、そこから映画化作品を3本観て*1、ちらっときいていた原作との違いが気になり、講義を担当されていた鹿島さんのこちらの本を読むことにした。

映画をみたとき気になっていた、聖職者フロロの屈折した愛情がおざなりになっていることの問題点、この本を読んでますます感じた。鹿島氏は60年代の映画「コレクター」*2テレンス・スタンプ演じる主人公とも喩えておられたが、まさにプライドが高くコミュニケーションが不器用な感じはその通り。ただの悪役でなく複雑な内実を抱えた人物であり、そこが肝要とも思われる。東海林さだお氏の漫画を引用されたりしながらの解説はカジュアルで読みやすかった。

ノートルダムの怪人カジモドのこともオタクにたとえておられるのもにやっとする。古いたとえだけど彼は「電車男」みたいな要素も強いなあ。とても純である。守り手として聖堂と渾然一体となっている感。

もともとは2017年の2月の放映、放送にあわせた雑誌のテキストが出ていたが、2019年の8月書籍化されることになり、ノートル=ダム大聖堂が建った歴史的背景や建築について書かれた特別章が加えられている。

ノートル=ダム大聖堂の建築の背景として語られていた異教徒の取り込み、ひとつには紀元1100年頃から起きたシトー会の大開墾運動からの森の開梱で森がなくなり、原始の森を信じていた北フランスの異教徒の信仰の対象を奪ったわけだけど、尖塔という森のイメージの大聖堂が建てられることによってその取り込みがなされたこと、またマリア(ノートル=ダム)崇拝が1130から1140年頃からのものでそれはケルトの農民に昔からあった大地母神アナへの異教徒的崇拝を回収したという話は面白かった。(これについては、こちらの「ゴシックとは何か」に付けられている鹿島氏の解説がわかりやすい)