記憶にございません!

記憶にございません!

記憶にございません!

  • 発売日: 2020/04/29
  • メディア: Prime Video
 

三谷幸喜氏、先日ソーシャルディスタンスバージョンに作りかえた「大地」という舞台をwowow同時配信していて、ちょうど今の演劇の状況を心に響く形で届けてくれ大変感動した。

stage.parco.jp

(↑「大地」は有料同時配信も続けて上演中。)

 

思うに三谷氏、舞台や大河ドラマの方が真剣味が伝わるというか、ある種の映画や民放ドラマは面白いのだけど、それはないやろ、と思いながら楽しむ気配であるような。(「ラヂオの時間」などはナチュラルだったし、「王様のレストラン」もうっとりだったけど「ステキな金縛り」*1とか真剣に見るほうが間違ってるのかもというような設定からの暴走ぶり。)

この作品は、三谷氏のドラマ「総理と呼ばないで」が成長した形という感じがすごくある。あと三谷氏の作品ではないけれど総理周辺のドラマ「民王」なんかも思い出しながら観た。観ている間十分楽しめたし、時々三谷氏の映画で気になるサービス過剰な場面もなくて良かったけど、最後の結論に至るはなしは、もしこんな流れ(野党党首の質問、その後の記者会見とかの流れ)が私の目の前で起こったら、ちょっと納得できない気持ちになるかもなと変にマジになってみてしまった。大好きだった産廃と闘う村のドラマ「合い言葉は勇気」でも途中苦労しているところはほんとに良かったんだけど最後の法廷の場面でこんなことあるかな?と気になってしまったことがあり、自分としては同じ分類の作品かな。最後が公に関わる堅いもののとき、ふと気になってしまうというか。。そんなこといったら「十二人の優しい日本人」だってになるといえば気になるけどあれはストーリーにそのまま飲み込まれたい気持ちになるものだった。でも、多分「十二人〜」や「ステキな金縛り」も今回と同じ種類の物語かな、ちょい無理もあるけど、そんな話もいいな、話に乗っとこうかみたいな作風。

三谷氏、朝日新聞連載のコラムでも、当時政権中枢で抵抗勢力などとも呼ばれていた野中広務氏のことをやさぐれ刑事みたいな味とシンプルに顔の評価をされていて私も頷いていたけれど、そんな感じで単にコメディの舞台として面白いから政界が舞台になった作品という感じがする。

ドラマ「総理と呼ばないで」とほんと骨格が似ていて、西村まさ彦が演じてた切れ者の側近にちょっと手を加えた役をディーン・フジオカが好演。背広七三男の持つセクシーさを感じさせてくれた。その側で働く戸田恵子の役は小池栄子松金よね子が演じていた総理に遠慮のない賄いさんは斉藤由貴が引き継ぎ。劇団時代から三谷氏の作品にユニークな色を添えてきた梶原善氏は横山ノック似の泥臭くも面白い役を好演などなじみの顔ぶれが適役を与えられ、ファミリー的に楽しんでしまう部分も多かった。

もともと私は「古畑〜」など純粋に楽しむための作品が好きだったので、三谷氏の演劇作品にあるシリアスさや訴えるものに触れたときいつもと違うという感じを勝手に覚えることもあったけれど、今回はその逆。三谷氏は状況を面白がること、魂を揺さぶるドラマという二つの特徴があり軸足のちょっとした動かし方でできあがりのテイストがだいぶ違うのかなとも思う。

お友だちにいい顔するための汚職など風刺も感じることがあったが、コメディとしてこの辺におさめるのが妥当という感じかな。陳情団のエピソードは、「総理〜」時代よりまじめに扱われているように感じた。

有働由美子さんと山口崇さんは最後の人物紹介まで気づかなかった。有働さんのばけっぷり。あと木村佳乃が「シンゴジラ」の石原さとみのような役回り。なかなかなりきっていて面白い。

山口崇さんは久々に拝見。確か三谷氏も山口氏大活躍の「天下御免」をお好きだったと記憶しているし、そんなつながりかなと思う。リスペクトしているものを混ぜ込んでいく少年の心が三谷氏の特徴でもあるから。エンドロールに流れる文字の色使いには市川崑→古畑の流れも感じた。なんやかやいっても時間分楽しめた映画ではあったな。