おかえりなさい、リリアン

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感受性が鋭く愛に対する欲求が強すぎたために60年も精神病院で暮らしてきたリリアン。病院の建て替えをきっかけに甥っ子の家庭にひきとることになるが、その妻、元女優のハリエットも思春期に差し掛かっている息子の子育てや次の子どもの妊娠などのことでナーヴァス気味になっており、そこから、という物語。

マイナーなグループの人間の心にメジャーな方(この映画では夫だったり、父だったり、世間だったり)は無自覚ではない?という問いかけが感じられる作品。でも無自覚側の夫もたとえば「女はみんな生きている」*1などコリーヌ・セロー作品に出てくる男性みたいにわかりやすく鈍感だったり足りなかったりして滑稽な感じではなく、彼なりに一生懸命だけど届いてない感じ、これくらいのすれ違いならあるなあというポイントが描かれていてそこの抑制した感じが良かった。

抑圧されている側の気持ちの表現ははっきりわかる激烈な形だったが、雨降って、そこから安易に地固まるのでなく、とてもストイックにまとめてありそこも好感を持つ。

リリアンを演じたペギー・アシュクロフトと、ハリエット役のジェラルディン・ジェイムズは89年ヴェネチア映画祭で最優秀女優賞をダブル受賞したという。

また思春期の子ども、彼の表現も絶妙。子ども時代のかわいさを求める側には生意気に思えてしまったりする彼も、彼なりの家族への心のかけ方をしているんだよ、という。悪者を安易に設定しない繊細な作品だった。

 

おかえりなさい、リリアン [VHS]

おかえりなさい、リリアン [VHS]

  • 発売日: 1993/06/02
  • メディア: VHS