野いちご

 

「空の巣症候群」なるものの存在をきいて、以前から警戒していたのだけど、最近久しぶりに子どもに会って別れた後など、これがまさにそれ?というような気分に出くわす。ぽかんと穴があいたみたいになって自分の生きる力の行方を探すような・・ふと、それはベルイマンの「野いちご」をみるベストな時期のように思えて鑑賞。正解だった。「野いちご」の主人公が栄えある名誉博士号を授かる日の朝、今までの人生を振り返って・・という話なのだが、ひとつのものが区切りを迎えた時のもうそれについては今からやりかえることもできないという締めくくり感は、件の「空の巣」とも共通するような気がする。

物語の教授がそれまでを振り返ってビターな気分になったりすることで、こちらも憂愁にとらわれる・・のではなく、自分の患部を教授の患部に置き換えて、救済を感じる物語。

初期ベルイマンの画面の美しさについてきいたことがあるが、こちらも素晴らしい映像表現で、はっとさせられながら見入った。「不良少女モニカ」*1と同じカメラマン、グンナール・フィッシャーによるものらしい。また映画の初めから心地よい緊張感があり、ぐいぐい引っ張られる。さすがである。素晴らしい仕事をみた満足感で充たされた。