大病人

 

大病人 [DVD]

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これも先日みた「病院で死ぬということ*1も同じ年に公開されたらしい。

なんか宣伝に使われていたCGのシーンとかが「大霊界」ぽい感じで(「大霊界」みてないけれど)みるのが遅れてしまったが、みてみて伊丹監督やはり面白いし卓見の持ち主だーと感心した。CGを使う場所はどうしても時代を感じるが、あの世とのかけはしのような表現。ちょっと大林監督映画のとんだ表現をみたときのような、当時のハイテクゆえに逆に年代を経てローテクにみえてしまう表現の向こうにある精神を汲み取ろうと言う気持ちになった。

身近で亡くなった人のことを思い出し、うなずくことしきり。死を知って生を生きることを強く意識した。同じ年の作品でテーマもにているけど「病院で~」より楽しませながらくっきりどう亡くなりたいかを伝える感じで私はこちらの映画に軍配をあげるなあ。(逆にくっきりさせず、上品なのが「病院で~」の持ち味なんだろうけど。)でも現実問題、理想的な幕引きには周りの助けも必要だったりして、すごく考え込んでしまう。ここに描かれていたような形でなくても方向性としては緩和ケア中心の過ごし方というのも徐々に当たり前の選択肢になりつつあるし、その方向性は歓迎だ。(といいながら、自分が向き合うとなったら迷うに決まっている。)

三國連太郎演じる主人公がおよそ死をみつめたがらない、色は赤の大好きな洒落ものの映画監督っていう設定、映画界の空気ごと楽しめた。

最後の最後彼が自分の作っている映画のラストシーンで表現するもの、そこに至るストーリーが実は用意されていたのではないのだろうかとも思った。三國さんご自身が「親鸞」という映画を作られたりもしているから、仏教思想とのつながりは自然だった。そして、あの流れ、息を詰めすぎない工夫が良い。

主人公の最期のシーンでの妻とほかのメンバーのリアクションの違いなどもリアルに感じた。

とにかく、たのしませ、考えさせる伊丹映画の真骨頂が発揮されている作品だった。