岸辺のアルバム

 

岸辺のアルバム DVD-BOX

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CSのTBSチャンネルで行定監督の選ぶ名ドラマということで放映していた。以前から評判はきいていてずっとみたかったドラマ。

日々まじめに暮らしている主婦八千草薫のところに竹脇無我の接近。現代の眼でみると気持ち悪いんだけど、山田太一氏のドラマは日常の裂け目を、他を丁寧に描くことによってみているものに飲み込ませる力がある。

構図からいうと「夕暮れて」で岸恵子へ夫、佐藤慶との暮らしに揺さぶりをかける米倉斉加年や「早春スケッチブック」で岩下志麻に対する山崎努とも似ているが、俳優の個性によってその流れは変えてありそれぞれうまく描かれているなあと感じる。

また「早春スケッチブック」や「夕暮れて」そして「それぞれの秋」でも起こった事態をみつめている少年の存在が大きいのだけど、このドラマの国広富之がまさにそうで、わたし今までちゃんと彼のことをみていなかったけれどこんなピュアなすてきな役をつとめていたんだという発見があった。

途中、平穏な家族それぞれに外からの誘惑の数々がしのびよるところ、お茶の間ではとても対応できない、やめてくれという感じだったが、最終的には大きなオペを経験するからこその山田ドラマだ、よいドラマだったなあと落ち着く。

80年代前半に東京に居たので登場する70年代後半の渋谷や四谷の風景がとても懐かしい。

娘役の中田喜子が、お高く止まっている女学生の役で最近の役とのギャップに驚いたが、徐々に変わってくる感じ、うまく出ていた。

極端な出来事で、みるものや登場人物を目覚めさせながらもそれに対応するひとつひとつの表現はリアルで丁寧だから説得力があるんだなあというドラマ。

ラストも手放しじゃない感じで面白かった。すごい意欲作。