長崎の鐘、この子を残して

長崎の永井隆博士の映画を二つ。

「この子を残して」は木下恵介監督 1983年作品 脚本のところに山田太一木下恵介
長崎の鐘」は大庭秀雄監督1950年作品 脚本 新藤兼人光畑硯郎橋田壽賀子

「この子を残して」の中で、永井博士の書籍がGHQによって出版を待たなければいけない表現があったが、劇作家の山崎哲さんのブログを拝見していると、映画「長崎の鐘」もGHQの検閲があったらしい。原爆の部分がかなり遠慮がちに描かれている。原爆の時のテロップも「戦争に狂う軍閥への最後の警告となった」というようなテロップが出てきた。
両方に山田看護婦という方が出てこられたと思うのだけど、「長崎の鐘」ではかなりラブロマンス風にまとめてあった。

「この子を残して」は、永井博士のお姑さんを演じた淡島千景がとてもよかった。白血病になった永井博士の遺児の暮しを支えていたお姑さんについて孫に語らせる言葉の視点もすばらしい。
浦上に遺された被爆遺児に対して、「お金をあげておいで のみがうつるから遠くから」と子どもにいった大人の話がでてきて、少々のお金を渡すことは自己満足で、被爆遺児の気持ちになっていないと永井博士が語るエピソードが心に残る。被災者が差別や二次被害を受ける問題を耳にするが、さらに踏み込んで自己満足の領域まで踏み込んで言及しておられる永井博士、長崎の、原爆の、偉い方、みたいに自分の中で簡単にまとめるのでなく、もう一歩踏み込んで主張しておられることに寄り添いたいなと思った。
その後の息子の教育を一番に考えての決断など山田太一のドラマをみているときのような、家庭生活の中での選択、どう判断してどう生きていくかということを特殊な例としてでなく自分のこととして考えさせられる。
ラスト「にんげんをかえせ」の合唱の使い方はこんな直球の使い方をしない方がいいように思えてしまう。よく木下監督について、時代の空気を吸い過ぎてあとからみるとしんどくみえて残念という言葉をふや町映画タウンの大森氏よりきくが、これもそうなのか・・83年という時代を考えると、自分ももう大学生だっただけにこの当時は観客はどう受け止めていたのか、ありがたい映画だからこの処理はこれでということだったのかなとも思ったり。

この子を残して [DVD]

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