森浦への道

1975年イ・マニ監督作品。
ふや町映画タウンの監督一覧をみていると、店主大森さんのふるいにかかった映画だけでも世の中にはまだまだ私の知らない監督や作品があるんだなあと感じさせられる。
この映画も、監督一覧でみつけて、どんな映画か検索したら好みの感じなので借りてみた次第。出会えてよかったととても感じた。

韓国映画ビデオ文庫のビデオジャケットより

仕事にあぶれた男、安酒場から逃げ出したあばずれ娘、刑務所帰りの中年男の三人が幻燈の田舎町をさすらう。現代人の孤独な魂を、あてどない放浪の旅に象徴した70年代を代表する名作。数々の名作を放った名匠イ・マニ監督の遺作。大鐘監督賞。

三人が歩く雪景色の美しさ、日本でいえば信州のような高い山が遠景にみえる。少し若い男はほらふき、もう一人の落ちついた男はムショ帰り、女も体を資本にやってきたこともあったという状況だけど、三人とも精神に卑しいところがなく、気持ちが良い。
リアリティのある間があったり、調子よくことが進まなかったりで、映画の運びも新鮮、安っぽい展開でないところがとても丁寧で心に残る。

タイトルの森浦は希望を象徴する架空の地名とのこと。

70年代の日本の作品とも重なるような洗練されきってないような魅力も大層感じる。三人が通りがかるお葬式での般若心経らしきフレーズや、また花を頭に載せたお祭りに、日本の行事(たとえば左京区久多の花笠など)も思い出し、近しい実感も。
あの三人に幸せになってもらいたいなとずっと心に残るような作品。

森浦(サンポ)への道【字幕版】 [VHS]

森浦(サンポ)への道【字幕版】 [VHS]