田中登監督が画面にこだわる人であることはきいていて、ちょっと町にでるところや室内の雰囲気は素晴らしいと思ったが、話としては女中だった阿部定が主人筋である男と遁走して、部屋にこもって性愛三昧という部分が、いかにも先のないやけくそ感に満ちていて、奮い立たせるためにみえる死ぎりぎりのもてあそびのようなやりとりをみているだけで行き詰まった気分にならされる。それと同時に心中ものとかでも、それぞれの気持ちの上で等価ではなく、どっちかが引きずられるままにってことはあるだろうなという気持ちにさせられる。赤い襦袢姿よりちゃんと着物を着ている時の方が色っぽいものだなあという発見もあり、定と男の時間はなんだかみていてしんどい気持ちばかりが募ってしまった。
- 出版社/メーカー: 日活
- 発売日: 1994/12/01
- メディア: 単行本
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