妻の心

サンデー毎日」7/2号の「『名画座女子』が選ぶ日本映画知られざる名作極私的ベスト10」という記事があり、DVD化されているもの中心の記事だったので、ベスト10には入れておられないけれど、筆者ののむみちさんがこの「妻の心」のことを大好きと書かれていた。成瀬監督の「妻」みたいなタイトルがついて、家庭の問題を描いたもの一杯みたけれど、はてな日記の記録はないし、みてなかったかなと借りてみた。別件で映画の感想をここに集約させる前使っていたyahoo movieをみていたら、自分の感想をみつけ、みてたんだと驚く始末。ネタバレに注意したら今でも感想はかわらない進歩のなさ・・それだけではもったいないのでビデオに同梱された山根貞男さんの解説からもう少し付け加えておくと、

  • 昭和の風景とぼんやり書いているのは、によると「地名は出てこないが栃木と思われる地方都市の佇まい。」とのこと。
  • 成瀬組の常連、撮影の玉井正夫も美術の中古智らの古い日本家屋の表現の熟達ぶり。
  • 三船敏郎が画面に出てくると一変する空気を小林桂樹氏が注目し、絶賛している旨。
  • 成瀬巳喜男が゛妻の座″を描く映画高峰秀子主演の中で「妻の心」は最初。

今回も感心したのは心の中のことはすべて表情や口ぶりの裏で表現する成熟した表現。舞台は老いた母(三好栄子)と次男夫婦(小林桂樹 高峰秀子)で暮らしている地方の薬屋さん。母屋の表現や、せりふの端々から割合大きな家というのが感じられる。そこに一度は家出して飛び出した兄(千秋実)とその妻(中北千枝子)、娘(松山奈津子)が東京での仕事に行き詰まって転がり込む。中北千枝子演じる妻の、姑や小姑に対している時の外の顏と、千秋実演じる夫と二人きりの時の本音トーク風の時の声のトーン、表情の違いなどもはっきりしていておもしろい。家の中での葛藤も、多くは語らないけれどわかってしまう高峰秀子の所作。寡黙な中、こころのうちはみているものにくっきりとわかる。爪切りの置き場などのさざめきも端的でおもしろい。
また、長女(根岸明美)の結婚支度から結婚というのがほとんどセリフだけでの説明になっているのも賢い省略だなと。ちょっと前マキノ監督の「昨日消えた男」*1でも高峰秀子の結婚というおめでたいシーンが説明のみになっているのも経費的にもなかなか考えたなと思ったが、「妻の心」では、経費のみならず切るところ切る、でもやはり長女が結婚したというプロセスは、外から結婚って・・と語らせてみたり、活かしてあっていい感じ。また結婚する前の娘ってこうだよなというのが、とてもうまく描かれていた。
ミフネの妹、竹村弓子演じる杉葉子さんの陽性な感じ、洋食屋各太郎とその妻波子の加東大介沢村貞子の息のあった感じなどほっとさせられるやらうれしい気持ちになるやら。

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