帰郷

佐分利信氏がえらくかっこいい。一番最初に佐分利信氏をみたのがテレビドラマの「阿修羅のごとく」だったし、そのあとみるのも「お茶漬の味」だとか、先日観た「花は偽らず」*1だとか、かっこいいという分類ではなくて、落ち着いた、と評したいようなものが多かったので、なにかとても新鮮だった。
川本三郎さんの「日本映画 隠れた名作」*2では津島恵子扮する、子供のころから離れていた佐分利信の娘と佐分利信が束の間会うシーンで、佐分利信がハンドバッグの中身をみせてもらうシーンが、向田邦子さんはプライバシーの侵害を感じられひっかられ*3、ドラマ「蛇蝎のごとく」の中で使われているとのことが書かれていたけれど、わたしはこの映画のあのシーンはさしていやな感じはなく、長いあいだ会っていなかった娘がどんな暮らしをしているのか、それをこういう方法で知ろうとする男の経歴なども感じるようなシーンに思えた。(「蛇蝎〜」ではこっそりみてほんとにいやなシーンとして書かれているようだけど、「帰郷」の中では一応ことわってみているし、またその求めに応じられる津島恵子の、日ごろがきちんとした素敵な娘さんっぷりも感じたりした。)
映画でだったか原作でだったか忘れたのだけど、「雪国」の中に確かあった、箪笥の中をみればその整理の仕方などでその人の生活がわかる、という私をぎょっとさせたセリフのような流れも感じた。

また「日本映画 隠れた名作」によると、山村聰が演じた戦争中は軍部礼賛をしておいて、戦後になるとパッと変わってしまう男の姿が、当時のインテリ批判になっているらしく、それをその渦中に描くのは勇気がいっただろうとのことだった。先日観た「聯合艦隊司令長官 山本五十六*4で、香川照之が演じていた新聞社の男がそういう感じだったなあ・・

苔寺がよいシーンで出てくる。なかなか簡単に行けない場所になっているので貴重だと思う。

all cinema

*1:http://d.hatena.ne.jp/ponyman/20170502/1493689787

*2:http://d.hatena.ne.jp/ponyman/20160508/1462667738

*3:エッセイ集「女の人差し指」の中の「ハンドバッグ」という項に書かれているらしい

*4:http://d.hatena.ne.jp/ponyman/20170516/1494885374