甘い罠

若松孝二監督生誕80年祭ということで、若松プロダクションのページで初監督作品の「甘い罠」が公開されている。

盟友足立正生監督や宮台真司氏等々のコメントも一緒に公開されているが、若松監督らしくない基礎の映画の文法に則って作られた作品とのことで、若松監督自身がフィルモグラフィーにこの作品をあまり加えたがっておられなかったよう。若松監督の作品、何本かしかみていないが、わたしは骨格がしっかりしている印象を持っている。そして、この作品もだ。
63年に作られたこの映画、渋谷円山町あたりと思われる風景が出てきて、その空気も満喫。ラスト近くの主演女優の凄味のある表情!彼女に起きた事件を描くにあたって彼女のプロフィールがとても丁寧に描かれているのでその基礎がきいている。おでん屋を営んでる主役の実家の人たちの住んでいる路地の佇まい、ボーイフレンドとのやりとり、会社での姿・・事件簿と称してそれを消費するつくりになっていながらその枠におさまらない刃を感じる。