煙突の見える場所

東京の下町にお化け煙突という、見る場所によって本数が変わる煙突があって、それがみえる土手の近くに住む夫婦と下宿人、近所の人の物語。お化け煙突のみえかたが、映画の根幹になっている。戦後とはいえ、まだ戦争の影響も強そうな時代。現代よりも否応なしに人が人に巻き込まれていっているし、基本的に苦い事がいろいろあってもたくましい。
上原謙田中絹代芥川比呂志高峰秀子という二組のカップルが出てくるが、美男競演という感じなのに上原謙たちの生活は自分の若い頃なら目をそむけたくなるような雰囲気。夫婦生活のいやなところが出ている。楽しそうでもなく、なんかじっとりしていて・・税吏である芥川比呂志はなかなか魅力的。頭でっかちからのスタートだけど、素直で最終的にはフレッキシブルなところもあったり・・この構図、この春NHKBSでしていたドラマ「奇跡の人」に出てくる下宿人の感じにも通じる。芥川比呂志高峰秀子のやりとりに出てくる張り子の虎や芥川が達筆で書く自分への標語など甘くはない現実の中での愛すべき空気を醸し出している。

煙突の見える場所 [DVD]

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