花とアリス殺人事件

花とアリス*1のストーリーの前日譚。
岩井監督初めての長編アニメ―ション作品、そして「殺人事件」とはどんな感じ?とあまり期待しないでみはじめ、最初はちょっと戸惑いがあったが、アニメ―ションでしか表現できない透明感、生身の人間では絵空事になりかねない甘酸っぱい感じがとてもよく出ていてとても好きな作品になってしまった。「花とアリス」の時もクラシックをベースにしたような音楽がとっちらかった少女たちの日常のバックで流れていてそれがとてもよかったのだけど、今回もあの音楽が使われ、あのテーマをきくと、もう岩井ワールドに持っていかれる。

蒼井優が今回は声優として演じるアリス、わたしが持っていたイメージより最初は活発で、こんな感じだっけ?と思ったのだけど、ぶっきらぼうで何も考えてない魅力っていうのがある女の子、それに対して鈴木杏の花の方は、頭でっかち気味で行動する前に考えすぎて策士策に溺れるみたいなタイプの女の子だったのねと感じられた。そして「花とアリス」の中での花のわけわからない作戦もこういう流れで生まれてきたものかと腑に落ちたりした。
人物の姿がさらっと描かれているのに対比して、町の風景はとてもリアルに描かれていて、はじめはその差異はどういうことかと思ったのだけど、そのタッチの違いで登場人物たちの漂っている感じが出ていてその辺もよかった。
しっかりしているかのようにみえて実は深く考えず目の前のことを対処してやっていってるアリスが花に踊らされ、初老の紳士と出会うくだりは岩井俊二流の「生きる」で、気持ちが持っていかれるなかなか好きなシーンだった。