人形浄瑠璃文楽 平成26年 初春公演

12月26日の新聞補助金減額にむけ「正念場」と書かれ、さらに1/15付の新聞では厳しい状況が伝えられている1月公演。この日の公演は本当に客席と舞台が呼応し合っているのが感じられすばらしかった。
百貨店などが閉店してしまう時、閉店セールだけにぎわってるところなどが報道されると、そうなる前に、自分の大切なものを常日頃から支えなきゃならないのに・・となんともいえない気分になるのだけど、この日の観客席は、大切な文楽が危機におちいらないように応援している感じがみなぎっていたし、また卓越した芸を目にしたとき、「そうそう!」といった感じで演者の方を一生懸命みて拍手や声援を送っているお客さんの姿をたくさんみかけ、テレビ中継ではない、現場の一体感を感じ大変充実した気持ちを味わった。
また、帰りには、人形さんたちと人形遣いさんが(大活躍の桐竹勘十郎さんまで!)ロビーでお客さんの見送りをされていて、並々ならぬ気持ちが感じられ本当に感動した。
みんながそれぞれ自分のベストを尽くす、という感じが舞台からもその後の姿からも感じられ、総合芸術である舞台ってやっぱりいいなとも思った。

だしものは第一部 二人禿 源平布引滝 傾城恋飛脚
第二部 面売り 近頃河原の達引 壇浦兜軍記

しょっぱなの二人禿からして、お正月らしい桃色の裃というところからして楽しめたが、全体的にみて特に二部がよかった。一体感も含めて。
「壇浦兜軍記」は歌舞伎でみたことがあったけれど、歌舞伎は歌舞伎で役者さんが琴、三味線、胡弓を実際にひかれるというのが見事でしょうが、わたしは文楽の舞台の方が楽しめた。ちょっと後ろの方でおどけている人形さんなんかもあって演出も親しみやすかったし。主役阿古屋に関しては人形遣いの方が三人とも顔を出しておられ、その中にはwowowの三谷文楽放映の時おみかけした吉田一輔さんの姿もあることなども、うれしい。主遣いの勘十郎さんの衣装はいつもと違うきらびやかさというハレ感もよかったし、衣装がなんどもかわるのも眼福。また胡弓の音はアイリッシュ音楽みたいなところもあっておもしろいなあとも思う。


おはなしとしては、「近頃河原の達引」が好きだった。猿回しのおにいさんが明るくてけなげだし、またけなげな若き女主人公を長老の風格の吉田文雀さんがあやつられるのだけど、文雀さんがお人形がつらい場面では本当につらそうに、完全にお人形に一体化され、お人形を慈しんでおられる感じがひしひしと伝わってきてすてきだった。

わたしは前回から英大夫さんと清介さんのコンビのところがなんだかすてきにきこえるのだけど、今回もとてもきいていて心地よかった。英大夫さんは新聞の読書のコーナーに記事が載っていたのや、教会での公演の記事を読んだこともあって親近感が増している。HPももっておられるようだ。

また一階の文楽紹介コーナーのようなところは、今回は入江泰吉さんの特集でこれもよかった。