小銭をかぞえる

町田康氏の解説に「体裁を整えない、よい小説」とのことば。
「焼却炉行き赤ん坊」と「小銭を数える」の二編が入っているけれど、ふたつとも同棲中の女性とのやりとりで、いつもこの女性関係のシリーズ、相手への遠慮会釈ないことば、描写に震え上がってしまう。芥川龍之介の「地獄変」じゃないけれど、こうまでつきつめないと読者に届かない、それこそ体裁かまって自分を安全圏におきながらいいものが描けるかというような鬼のような勢いがあって、自己弁護するところが全然ないものだから、ほんと女性にひどいんだけど、さばさばすがすがしく読めてしまうし、息つくいとまもなく読み続けたくなる。
表紙もとってもいい。森田朋さんという方の挿画、デザイン関口聖司さん。

小銭をかぞえる (文春文庫)

小銭をかぞえる (文春文庫)