五番町夕霧楼

朝日新聞の「映画の旅人」というコーナーにこの映画のことが取り上げられていて監督の田坂具隆氏が三高出身ということで1963年、佐久間良子主演だった方のこの作品に興味を持ち見てみた。
最近つくられる遊郭ものみたいにただ遊郭の華やかさ、そこにちらっとみえる哀感みたいなのでまとめてあるのではなく、木暮実千代演じる夕霧楼のおかみさんの描き方がステレオタイプでなくしっかりとしていたり、短歌をたしなむ遊郭の同僚、飯炊きおばさんの含むところあるような表情、さしはさまれる新聞の記事からみてとれる世情などが細やかに描写されていてがっちりしている。また田坂監督は原爆の後遺症で苦しまれたと読んだけれど、原爆のこともさりげなく描かれていて、予想以上に骨のある映画だった。
河原崎長一郎が相手役なんだが、若い時はこの人の持ち味がわかっていなかったが、今は適役だとちゃんとわかる。千秋実演じる西陣の旦那、すごくナチュラル。また京都の描写も土地土地の雰囲気がちゃんと描かれている。千本通のロケシーンも楽しい。

五番町夕霧楼 [VHS]

五番町夕霧楼 [VHS]