シネマ歌舞伎 野田版研辰の討たれ

名作の誉れ高いこの作品やっぱりすばらしかった!
舞台にしつらえた階段の使い方の巧みさ!しょっぱな赤穂浪士の討ち入りの表現をシルエットで手短に描いてみせたところからもうぐいぐいとひきこまれる。
研辰(とぎやのたつ)を演じた勘三郎さんの衣装が着物なのにミリタリー風。幕もちょっとそういう感じ。息もきらせぬ活躍ぶりに映像なのにスタンディングオベーションをしたくなる。(実際の舞台ではそうなったらしい。)劇場全体がそういう満足感につつまれていた。
討ち入りなんざごめん、いつまでも生きていたい人間 研辰のせりふが早世してしまわれた勘三郎さんと重なってぐっときてしまう。せりふというのはすごいものだ。その時点でそんなつもりなかったのにちゃんとあてはまってしまったり。古典になりうるものというのはそういうものなのかなと思う。

作品紹介

2014/3/30原作の木村錦花の方も読んでみる。(昭和四年 春陽堂刊 日本戯曲集第三十九巻)
「研辰の討たれ」「稽古中の研辰」「恋の研辰」の三作品にわかれて収録されている。もとの方を読んで野田版で付け加えたところ、省略したところがはっきりっした。
白水社の「日本現代演劇史」によると大正15年に「研辰の討たれ」、15年12月に続編「稽古中の研辰」昭和二年に「恋の研辰」が上演されたという。猿之助の「小栗栖の長兵衛」以来の喜劇てな才能を存分に発揮して大好評だったとか。「小栗栖の長兵衛」はちょうど、先日、香川照之が、ご先祖様の舞台のビデオを何度もみて稽古しているところがテレビで放映されていて、そのご先祖様の演技、間合いとかものすごくおもしろいなと私も思っていたところだった。