もう表紙の写真がかわいらしくて。主人の話きいていながらもふらっとどっか出て行ってしまいそうな猫の風情。みたら町田康氏の撮影らしい。さすが。
そして、言葉づかいのすばらしさ。ユーモラスで品があって偏屈、という雰囲気がぷんぷん漂っていて、その内田先生が猫のことをすごく想っていて。在りし日の猫の描写がすごく卓越していて。なんといっても読みやすいのがうれしい。ノラをいじめる「悪い奴」(ネコ)をやっつけに走る奥さんのかわいらしいこと。
途中大分に旅行に行かれるのだけど、いつも一緒に列車旅行に出かけるお弟子さんたちのあだ名がまた愛すべき感じ。この本をまとめた平山三郎さんは「ヒマラヤ山系」から「山系」とか。昭和32年秋に文芸春秋新社から刊行された「ノラや」は夏目漱石の猫の鉛筆画がおさめられていたり、先生のところにきた励ましの手紙なども一緒に収録されていたらしい。愛情をこめて作り上げた一冊って感じでいいな。一度こちらもみてみたい。
先生が泊まった松浜軒というところがとても気になって・・今は史跡名勝庭園になっているけれど一時期泊まれるようになっていたらしい。(こちら参照)
昭和三十年代の麹町あたりの空気が体感できるのも大変心地よかった。
- 作者: 内田百けん
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1997/01/18
- メディア: 文庫
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