ヤンヤン 夏の想い出

エドワード・ヤン監督の作品は「エドワード・ヤンの恋愛時代」とこれとまだ2作しかみてないけれど、両方とも説明的でなくて、ふっとその町に、その職場に自分が迷い込んで、観察していくうちにそこの人間関係がわかってくる、みたいな手触りがある。なんかドキュメンタリーに近いような空気、この話法、独特だと思うし、くせになる。もっとみたくなる。
あと部屋の描写。今回も何度も何度も同じ角度からうつしだされるヤンヤンたちの住む部屋がとてもよかった。ヤンヤンの叔父の結婚式からはじまって人生のいろんな事柄がつまった映画。そして、父NJを軸に、ある時は他者の人生でそれを表現し、ある時はNJにそれを再現させ、一回限りの人生の中で違うものを選んだらどうしたか、という話が手を変え品を変えて出てきているような感じがするストーリー。うそくさい盛り上がりとかでなく、苦みを味わいながらやっていく感じがとてもよかった。
そしてイッセー尾形演じる天才的ゲームデザイナー太田や、NJが訪れる日本の描き方がすてきでうれしくなる。自分の個人的な思いがかなり影響しているとは思うけれど、私は東京のビルのあかり、それも商業ビルでなく、残業中のビルのあかりの風景をみるとそこにその時間も働いている人に思いを寄せて、郷愁とあこがれと、この映画のテーマでもある、分岐点で違う方に来た自分の生活を思って不思議な感慨に浸ってしまう。

ヤンヤン 夏の想い出【字幕版】 [VHS]

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