兄とその妹、浅草の灯

島津保次郎監督の「兄とその妹」と「浅草の灯」を鑑賞。「兄とその妹」はキネマ洋装店の紹介を読んで、「浅草の灯」は、ふや町の店主大森さんのおすすめリストに載っていたため。

兄とその妹」は昭和14年の作品なんだけど、オフィスやそこで働く桑野通子のたたずまいとか、ハイキングで珈琲を飲んで一服してみたり、とてもモダンでおどろくほど。また映像もなにかリリカルな工夫があって愛すべき雰囲気だ。女性像も古臭くない。桑野通子の同級生が集まるシーンから醸し出す雰囲気はちょうどその当時あまり年のかわらなかったであろう伯母が、現在旧友としゃべっている時のノリにそっくりで、その人の嗜好とか生活スタイルって、かなりの部分多感な若い時に形作られるのだなぁとつくづく感じる。(自分もそうだと思うから)「キネマ洋装店」にも書かれているのだけど、とにかく生活のデティルまで心をこめて描いているところが好ましい映画で、ほほえましいシーンもたくさんあった。

「浅草の灯」は、浅草オペラをとりまく人々の話だけど、オペラに夢中になってしまう学生とその仲間っていうのが罪がなく、力もないけれど、なんだかかわいらしい。昔の学生さんの話ってとても好き。斎藤達雄が、愛嬌のある舞台仲間役で、彼がでてくるたび夢中になる。このひとが活躍する「生れてはみたけれど」も「簪」も大好きな映画だけどもっと彼の出ている映画みたいな・・・