セツ・モードセミナーの名前はよくきいていたが、セツさんの本を読むのははじめて。セツさんの審美眼にかなった映画を本当に愛情こめて語っていて、また映画に流れる思想もセツさんが感じたままに批評していて、セツさんのまっすぐな精神が感じられる楽しい書物。1985年の刊行で、自分はちょうどそのころ映画をたくさんみていたのだけど、80年代のものでも語るに値するものがたくさんあってうれしい。(なんとなく、80年代のものってちょっと軽いイメージもあるから、あの年代のものはたくさんみているんだけどなあ。。って感じだった。)
この本を読んで、ぜひみようと思ったのは、長そうだけど見ごたえのありそうな、デニーロやドミニク・サンダのでてくるベルトリッチの「1900年」、ジョン・ヴォイトの悲哀ある父親ぶりに興味のある「5人のテーブル」、好きな分野であるバックステージもの、アントニオ・ガデスとパコ・デ・ルシアの「カルメン」、ユーゴラスラヴィアのジプシー音楽に興味がある「歌っているのはだれ?」。
ゲンズブールの監督作品「ジュ・テーム・モア・ノン・プリュ」のことを「奇をてらっただけのむなしさに見えた」と書くような思い切りの良さもとてもいい。その映画は未見なんだが、私もジェーン・バーキンを使ったゲンズブールのテレビ番組にちょっと「?」って気になったことがあったから。(妙に煽情的だったりもするし、ゲンズブール当人は自分の才能を疑っていない感じがしたんだけど、「それで?」みたいな気分にちょっとなった。←こんなことを思いきってかけるのもセツさんの文章を読んだおかげだ。)
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