私は好奇心の強いゴッドファーザー

自分と映画のかかわりを短い文章でうまく表現した連作エッセイで、初出は「IN☆POCKET」という、多分講談社文庫の広報誌のようなものだから、読みやすく、でもおもしろいだけでなくなかなか深い内容。

「ジプシーは空に消える」という幻のソビエト映画を探す過程で川本三郎さんの名前がでてくるのもうれしかった。(川本さんがキネマ旬報ベスト10でいい点数をいれていたことから、再度原田さんはこの映画とめぐりあわれたのだそうです。)

簡単な文章ながらいろいろ映画の知識も深くて勉強にもなるんですが、一番へーって思ったのは、アン・バンクロフトが、「イレイザーヘッド」をみて、デビット・リンチの才能に目をつけご主人のメル・ブルックスを動かしてブルックス・フィルムで「エレファントマン」をつくったという話。有名な話なのかもしれませんが、別々に好きで、あまり関係がないと思いこんでいた人々が結びついていることを知るこの喜び!

リンチ話がかいてある「リンチのやり方」ってタイトルもなかなか楽しい。
その後エピソードが紹介されている「ブルー・ベルベット」、これも80年代にみたけれどざーっとみただけだったなぁ。。後年イザベラ・ロッセリーニデニス・ホッパーももっと好きになったから、今みるとちがうだろうな。。

学生時代にあびるように映画をみたという話が出て来るのですが、まぁわたしもそうで、そして、彼と同じく その時みた映画がその後の基礎にもなっているけれど、結構もう一度みないとあの時の印象だけでその映画はこういう映画、って思ってしまうのは危険かもしれない。。原田さん自身も、「ああ こういうことで泣いたのか〜」と若き自分を、映画をみることによってみつめなおす入れ子構造の体験を書いておられる。