流れる

柳橋の芸者屋さんの女たちを描いたこの作品、出てくるのが山田五十鈴田中絹代杉村春子高峰秀子岡田茉莉子など本当に芸達者な人たちであることに加えて、家の中をひょいと歩きつかまれる猫、路地裏や川辺の風景が本当にさまになっていて、映画の魅力をさらにもりあげる。

情緒は風景の方で説明して、人間はあまり感情過多な感じでなくあくまで流されているような雰囲気がとてもいい。

今では大御所感のある岡田茉莉子さんだけど、この映画ではくりくりとかわいらしい感じでそこも魅力。あと、実生活は激しかったような話をきく田中絹代さんの、なんともいえず安定感があって頼りたくなるような雰囲気もすばらしかった。


流れる [DVD]

流れる [DVD]

VHS版にて

東京観音

このお二人でみてあるいたからこそ!というような東京のあちこちの仏さまをみてのおもしろい感想、おもしろいショットの写真が載っている。相手が仏様でも全然遠慮のない感想。でもだからこそまっすぐで心地いい。

東京観音

東京観音

見仏記 親孝行篇

みうらさんといとうさんの見仏記も4巻目。前回から4年たったということで、なんか落ち着きが感じられる。このお二人で開催されるスライドーショーみたいに笑いっぱなし。。って感じではないのだけれど、ショーの中ではみられない二人のしっとりとした部分も垣間見ることができ、読んでいてジーンとしてしまったところもある。だからといってウェットな本でなく飄々とどこか間抜けな要素もちゃんと持ち合わせながら旅は続くのだけど。

文学的商品学

斎藤美奈子という人は手をかえ品をかえいろんな新製品を考案して発売するお菓子屋さんのよう。砂糖とか小麦粉とかみなもおなじみの材料をつかって思わぬ形にして商品化していかれる。この本は「商品学」という切り口で文学をとらえたもの。物語の中の部屋やファッションといったアイテムから文学にアプローチしている。斎藤さんはよくみなに信奉されているような本をドライに取り扱ったりもするけれどえらそうに批判ばかりして。。という人でもない。今回もネガティブな嫌みに満ちて紹介されている本もあったが、ご本人も意識されているのか、「この本には愛情をもっておられ評価されているようだなぁ」というポジティブな評価のものも目立っていて、斎藤さんがほめているならぜひ読んでみたいな。。という気にさせられた。自分のきらいなもののことをネガティブに嫌みいってもらうのもおもしろいけれど、ポジティブに「読んでみたい!」って気にさせてもらうのもとても気持ちのよいものだなあ。

文学的商品学

文学的商品学

文壇アイドル論

斉藤美奈子さんって「まとめ方」がおもしろいんだよなといつも思う。「妊娠小説」もわたしも、結構 日本文学において妊娠がらみの話って多いな。。それが一大事って感じだなとは思っていたもののすっぱりとまとめてくださってなんかすっとした気分だったし、この本でも、いろいろな作家論を繰り広げるにあたって「どう読まれているか」ということに主眼をおくやり方はおもしろかった。もちろん人の批評をまとめるに終わらず自分自身のおもしろい見方も盛り込まれているから楽しいのだろう。わたしは特に林真理子 上野千鶴子 田中康夫のあたりのはなしに共感をおぼえた。立花隆のはなしもおもしろかったなぁ。。

文壇アイドル論

文壇アイドル論

わたくし的読書

大田垣さんは本当にさりげないシンプルな絵でご自分を表現されていて、とっつきやすいけれど内容はどうなのか?と書店で迷われるかもしれません。かくいう私もそんな一人でした。しかしこれは買ってよかった。哲学、性愛、散歩。。いろいろなことを何冊かの本をもとに考える手がかりをもらったり、深い洞察に感心したり。。色刷りになっているパリ事情も地に足着いていて刺激があってとってもおもしろかった!

わたくし的読書 (MF文庫)

わたくし的読書 (MF文庫)

お父さんは時代小説(チャンバラ)が大好き

吉野さんが「本の雑誌」に載せておられた本に関する本(この本の場合はマンガ部分と対談で構成されています。)の三部作の第一作目なのですが、ざーっと三作読んだ中でこれが一番しっかりした内容のような気がした。(三作とも読んでいてたのしいのだけど。。対談部分できっちり本を読み込まれほりさげておられるのでこの本の印象が特にいいのかもしれない。)芥川や漱石など正統派文学の素養から今の吉野さんがあるということもわかり吉野さんが引用している漱石の文に深く感銘をうけたりして、また刺激を与えられた本だった。タイトルは時代小説ですが時代小説の専門書ではなく、広く読書する楽しさや読書の周辺を綴った作品。

お父さんは時代小説(チャンバラ)が大好き (角川文庫)

お父さんは時代小説(チャンバラ)が大好き (角川文庫)

驚典

群ようこさんってきちっと生きてきた人だとわたしは感じるのだけど、この本の中でも、その人柄がしのばれるような居心地のいい雰囲気が対談中に漂っている感じで読んでいてほっとした。だからといって説教くさいとかシャープさに欠けるとかそういうのではない。群さんの雰囲気からか、対談相手の人も変に虚勢はったりこけおどし的な発言をしたりというのでなく、生活をそれぞれちがう形ではあるけどきちっとやってきている感じで読んでいて励みになるし自分もきっちり自分の道を歩んでいこうという気になる本だった。

ノーマンズ・ランド

戦争を扱っていながら 入り口はすごいカジュアルだし、大作風でもない。みる楽しみも意識していながらしっかりした骨がある!(重苦しさはないけれどちゃんとメッセージは伝わる。)すごく良質の映画。

この映画をみてアカデミー賞外国語映画賞というのはなかなかよいものを選んでくるのではないか?と思うようになった。

ノー・マンズ・ランド [DVD]

ノー・マンズ・ランド [DVD]