毎日がアルツハイマー  ザ・ファイナル

 

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監督の関口祐加さんが朝日新聞に載せておられた介護に関する意見*1が愉快で、この映画もみてみたいなと思っていた。

オフィシャルサイトに、アン・リー監督にコメディのセンスを評価されたとのことが載っていたが、ユーモアベースがこの映画の魅力。大好きな父親三部作をつくられたアン・リー監督、その後違う方向の映画を撮っておられるように思っていたが、関口さんの作品をみてコメントされたりしているんだなあ。そこも嬉しい。

介護する娘さん(この映画では監督本人)が、もちろんちゃんとお母さんの面倒をみておられるのだけど、我慢ばかりして自分を出さないのでなく、本音でカメラに向き合っている感じが「徘徊 ママリン 87歳の夏」とも相通じる。

この回では関口さん自身が手術で入院しなければいけなくなり、自分はどういう最期を迎えたいかという話になっている。どういう最期というのは、選びきれるものでもないけれど、ある程度の選択肢はあってその選択ができる間していくのもまさに「生き方」の選択でもあるなあと感じる。

 
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光で書く 撮影監督ストラーロ

ベルトリッチ監督やコッポラ監督と仕事をしてきたストラーロ撮影監督の1992年に製作されたドキュメンタリー。色彩に意味をもたせての仕事。ベルトルッチ監督自身がその解釈に疑問を持ってもストラーロに任せているという言葉もおもしろい。(検索しますこの後一緒に仕事をされなくなったとか?*1

未見の映画「レッズ」に興味を持った。

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主戦場

www.shusenjo.jp

慰安婦問題で対立する意見を日系アメリカ人You Tuber ミキ・デザキ氏がひろい上げ退屈しないタッチで巧みにまとめた作品。対立する論点を箇条書き風にまとめ、それぞれの陣営の意見を撮っているのだけど、パンフレットで森達也氏が

映画は論文ではない。あなたは主張する主体の表情をスクリーンで見る。声を聴いて目の動きを確認し、一瞬の笑みや吐息に気づくこともできる。言葉だけでない。そこに本質が現れている。

と書かれているように、私のようにみているだけの人間はその論点になっていることを自分で検証することは難しいが、話している様子からどちらの態度が自分にとって信頼おけると思えるのか、それは認識できてしまう。。とはいうものの、ドキュメンタリー映画というのは膨大なその人の人生からそれを作品にする部分を切り取っているわけで、片方のいやなところはきっちりわかったが、もしかして自分が信頼おけると思っている陣営のいやなところは公開されなかったのかもしれない・・ということも考えてしまう。

デザキ氏のスタンスは、彼も肩入れしているであろう陣営の欠点、賛同できない点も指摘していて、そのさじ加減も含めうまくできた作品だなあとも感じた。

片方の陣営に完全に加担するわけでなくても、少なくともレイシスト的な発言が気になる側にはくみするわけにはいかない、そこまででいいのだと思うし、なにかに属した途端集団の意見にのまれるくらいなら、消去法で物事を考えていく方がいいように思われる。

大切なことが十分な議論がされないまま決まっていき、不安を感じる昨今、日曜の朝早くから京都シネマに人が集まっていることは嬉しかったし、ほのかな、本当にほのかだけど希望も感じた。

徘徊 ママリン87歳の夏

日本映画専門チャンネルにて。

www.nihon-eiga.com

深刻ぶって突き放すのとは反対の、問題点はみつめながらのみこむ感じが良い。娘さん、以前猫のいるギャラリーということで訪ねたことのある大阪北浜の10W gallery の方。ママリンがとてもかわいらしく装っておられるのと、ママリンと娘さんの住居がとても心が落ち着く感じで気持ちの良い作品になっている。だけど、もちろんきれいごとでなく、ママリンに煩わされている娘さんの姿もちゃんと映し(それがまた介護経験者にはわかる方が多いのではないかと思うけれど、突然相手が狂暴化してこっちが試される感じ。また答えられないような問いかけをされているシーンなど。これらどれもこれもこの映画の中だと介護されている側もいろいろ考えているのだなあと思える。また娘さんの言葉にもそういうことが出てくる。認知症で阻まれているものがあるけれど、それでも考え続ける源泉は何・・というような言葉。)でもそこからの娘さんなりの結論、腹をくくったもん勝ちという考え方、自分が大きくなるまで少なくとも10年は手をわずらわせただろうし、それくらいは覚悟を決めているとの話、また大阪の街の中でベタベタでなく協力してもらいながらやっていってる姿、なにか希望が持てた。。と同時に娘さんが、自分自身が認知症にならないようにと思っての行動をしておられるのは、認知症認知症のまま受け入れる社会が欲しいとは思ってはいても、やはり自分のこととなるとできれば避けたいと思うよなあと共感してしまった。

監督の田中幸夫氏が書かれたこの記事も良い。

news.yahoo.co.jp

 

娘さんの10W gallaryのサイトをみていたら、こんな展覧会のことが載っていて

winfo.exblog.jp

共催されている北浜のレトロで雰囲気のあるビル、青山ビル1Fの遊気Qさんも昔行ったことがあったなあと懐かしい。

MAKING OF DREAMS

 

MAKING OF DREAM [VHS]

MAKING OF DREAM [VHS]

 

大林監督による黒澤監督の「夢」のメイキング。黒澤監督、天皇とかいわれてて、今まで作品に厳しい映像ばかり見てきたが、このメイキングの中ではとても素敵な笑顔が見られた。自分の思いが通じたときこんな満面の気持ちのよい笑みを浮かべる人だったんだ。。エキストラの人たちへの心からの挨拶、撮影現場で泣き出す赤ん坊に困っている姿など黒澤監督のことを近しく感じられる映像がたくさん挟み込まれていた。大林監督の黒澤監督への愛情も豊かに感じとれるフィルムだ。

90年当時、映画「夢」をみたときは、ちょっとピンと来なかった部分もあったんだけど、このメイキング通して再見しているとなかなか楽しい。一番記憶に残っていたのは葬送のシーンだったが、撮影風景をみていると笠さんの演技に黒澤さんがとても目を細めてみておられるところが映っていて幸せな気持ちになった。キツネの嫁入りのシーンも葬送のはなしとごっちゃになって覚えていたが、独立した別のはなしでこれまた素晴らしかった。はじめてみたときより、葬送にも民俗学的なことにもこちらが関心を持っているということもあるだろうし、黒澤監督が80歳になって伝えたかったものを渾身の力で描いたものということもこのメイキングでしっかり感じとれ、映画本編への理解も深まったと思う。

原発に関するものも「夢」の中にはあったんだなあ。まさに311以降の日本を予見するようなことが語られていて驚いた。

本多猪四郎監督との友情も素晴らしかった。

余談だけど、エキストラの青年たちがスタジャンを着ていてとても懐かしい気持ちになった。時代ごと封じ込められている感じ。

ピエール&ジル:ラブ・ストーリー

 

ピエール&ジル:ラブ・ストーリー [VHS]

ピエール&ジル:ラブ・ストーリー [VHS]

 

 ふや町映画タウンにあるユーロスペースのアートドキュメンタリーの一覧*1をみていて興味を持ったもので借りてみた。ピエール&ジルはLGBTカップルで、ピエールは写真家でジルは画家。写真と絵を融合させた作品を作っている。パリで開催された展覧会の案内*2は彼らの感じをよく伝えている。

その作品は、私には高畑華宵のようなテイストを感じさせる。ファンタジックで耽美、どこか思い詰めていてそれがみているものに爆発的な気持ちを誘発するような・・80年代に細野晴臣さんがプロデユースしておられた懐かしきフレンチデュオMIKADOのアルバム写真も手掛けていたらしい。(こちら。)

 ↑のアルバムは記事内にうまく写真が表示されないけれど、こちら↓もピエール&ジルの作品だと思う。

Forever

Forever

 

 カトリーヌ・ドヌーブがインタビューの中で「ジャック・ドゥミが生きていたら、彼の世界とぴったりで絶対気に入っただろう。」というような発言をしていたのが心に残る。

ボルタンスキーを探して

 

ボルタンスキーを探して [VHS]

ボルタンスキーを探して [VHS]

 

 

ボルタンスキー展を大阪でしていて行かれた方の反応がよいもので予習のつもりで借りてみた。監督のアラン・フレッシャーは映画作家でもありまた写真家、美術家でもあるということで、二人は長年映像上の共犯者だったとのこと。

この作品によるとボルタンスキーは匿名の多数の人々の衣服や写真など生命のかけらのようなものを並べて展示するようなことをしているという。その感じ、どこのどなたかはわからないかたのブログや日記を読んだり、「ドキュメント72時間」で思わぬ町の人の人生を垣間見る感じと似ているのだろうか。。それともそれぞれの由来の品が一列に並べられることにより、もっと俯瞰で人が生まれて死んでいくことを望遠レンズ的に味わうものなのだろうか。。行かれたかたが生と死について考え、味わったというようなことをかかれていて、実際に展覧会にいったりもう少し情報を集めて知ってみたいなあというところ。