J MOVIE WARS vol.1、欲望だけが愛を殺す~パンドラの匣~

 

J.MOVIE WARS(1) [VHS]

J.MOVIE WARS(1) [VHS]

  • 発売日: 1994/07/22
  • メディア: VHS
 

 

欲望だけが愛を殺す Vol.2‾パンドラの厘 [VHS]

欲望だけが愛を殺す Vol.2‾パンドラの厘 [VHS]

  • 発売日: 1994/12/23
  • メディア: VHS
 

 

宝生舞目当てで「欲望だけが愛を殺す~パンドラの匣~」を借りようと思ったのだが、

パンドラの匣」は シリーズ第二作目のようなのでシリーズ一作目の入っている「JMOVIE WARS vol.1」のビデオも借りる。そちらに入っていたのが石橋凌主演版の「月はどっちに出ている」。短編。wowowスペシャルドラマでそのあと劇場公開されたものらしい。そして、そのあと長編として作られた時主人公は岸谷五朗に代わった模様。

もともと岸谷五朗の長編のバージョンを楽しんでいたもので、こういうバージョンがあることを知り驚いた。これはこれで短編の枠内で楽しく、でも主人公の在日朝鮮人として味わうビターな気分などはさらっと的確に描かれていて、短編、長編ともに魅力がある。(長編の方で好きだったルビー・モレノとの「もうかりまっか」「ぼちぼちでんな」みたいな掛け合いは密かに楽しみにしていたけれど見られなかった。)とにかくこの作品、岸谷五朗版を観たとき底に横たわる在日朝鮮人のおかれている立場というテーマをとても軽快に描いているもので画期的にみえ、原作「タクシードライバー日誌」も読んだのだった。原作はまた映画とは違うテイストで楽しめた。(実際に梁石日氏が体験したエピソードをビター入りつつの面白いテイストで綴られている。) 

タクシードライバー日誌 (ちくま文庫)

タクシードライバー日誌 (ちくま文庫)

  • 作者:梁 石日
  • 発売日: 1986/10/01
  • メディア: 文庫
 

 「欲望だけが愛を殺す」の一作目、こちらは「月は~」と共通、タクシーの話から始まるブラックなテイストのオムニバス。何が起こったのかわからなかった話が最後までみるとちゃんとつながってなかなか面白かった。一話目に杉田かおる氏が出てくるのだけど、90年代初頭の杉田さんあまり存じ上げていなかったかも。

画像

 

「欲望だけが愛を殺す~パンドラの匣~」の方も5つのエピソードがからみあっている話。お目当ての宝生舞氏、キリっとした少年のような美しさ。女優業を引退されたように認識しているけれど懐かしい。(芸名も雰囲気にピッタリだったなあと思う。)

国訛道中笠

movies.yahoo.co.jp

昭和12年嵐寛寿郎プロダクション作品。

国定忠治の物語。「赤城の山も今宵限り」というセリフだけは知っていたが、トータルのストーリーは知らないもので、山根貞男さんの解説には「お馴染みのドラマ」と記されている冒頭の板割の浅太郎が叔父の首をかかえて赤城山へ戻ってくる挿話など、推測で観る感じだったが、ちょうど歌舞伎や文楽で一幕だけ観るような感じになり、それなりの楽しみ方だった。ここは、一度前段の部分も観てみたい。赤城山を下りるシーンはあったが、件の台詞は出てこなかった。

そのあと、山形屋の場というのがクライマックスシーン。これはきちんと描かれていて楽しめた。山形屋というアコギな商家にえらい目に遭わされるのがアラカンさんの従妹でもあった森光子氏。とても可憐。

 

山形屋というところで、国定忠治の凄みをきかせた交渉術が始まるのだが、お互いキセルをふかしながら、静かなる闘争をするところが面白い。

また途中町のうわさ話のような形で、国定忠次より怖い。にっこり笑って人を斬る」というような決め台詞が出てくるのなど、いかにもポピュラーな題材を観ているという楽しさがあった。

真実、フレンチアルプスで起きたこと

 

真実(字幕版)

真実(字幕版)

  • メディア: Prime Video
 

 

フレンチアルプスで起きたこと(字幕版)

フレンチアルプスで起きたこと(字幕版)

  • 発売日: 2016/06/15
  • メディア: Prime Video
 

「真実」は是枝監督がカトリーヌ・ドヌーヴジュリエット・ビノシュイーサン・ホークなどを使った作品。撮影ドキュメンタリーで、カトリーヌ・ドヌーヴが自分のペースで現場を振り回しているのやら、日本人スタッフの言葉の壁やらを目撃し、作品としての仕上がりはどうなんだろうか・・と観るのが後回しになっていた。が、よい評判も耳にし、拝見。冒頭などはとてもひき込まれるし、楽しく観ることができた。ラストにかけての仕掛けでこちらの気持ちが急展開というところまではいかなかったけれど、是枝監督、「海よりもまだ深く*1などでも、こういうことあるよね、と微笑しながら観るスタンスだったし、この映画もスケールは大きいけれどそういう楽しみ方のできる作品だったなと思う。ドヌーヴの雰囲気をうまく使った小品というか・・ドヌーヴの娘婿という設定のイーサン・ホークの自然体の演技がとても良かった。

 

「フレンチアルプスで起きたこと」、こちらは良き評判をきいていてずっと観たかった作品。やっと観ることができた。「あるある」という気持ちになる映画。家族バカンス先で起きたことというおはなしだが、人間と人間の、一つ間違うと大きな不信感にも発展しかねないぎくしゃくをとてもうまく描きつつ、周りの人の対話などから、現代の結婚観、交際観、人生観なども浮き彫りにしていてなかなか巧みな作りだと思う。伏線の回収もすっきりしている。

カツベン!、大河内傳次郎乱闘場面集

 

カツベン!

カツベン!

  • 発売日: 2020/06/10
  • メディア: Prime Video
 

 公開された時、周りで賛否両論だった作品。周防監督好きだし、活弁という素材も好きだし・・で、私もみるのを本当に楽しみにしていたのだけど、「否」の意見の中で、今活躍している活動弁士を使ったカツベンが聞きたかった・・という意見もあり、私も活動弁士特集のこの↓番組をみたとき、澤登翠さんや片岡一郎さんの活弁が本当に面白く、確かにああいうの聞きたかったという思いは持った。

www.tv-tokyo.co.jp

「カツベン!」も、片岡一郎さんの指導がはいったということで、主役の成田凌氏の活弁はなかなか魅力的であったが、監督や素材への期待が大きすぎて、ストーリーにはもう少しうねりが欲しいかなという気持ちになった。ドラマで好きになった黒島結菜さんの活躍は嬉しかった。

最後バンツマの「雄呂血」の場面が出てくるのはかっこよかった。二川文太郎監督も作品中出てくる。(←このことを確認しようと調べていて、山本耕史が演じていたのは牧野省三だったと知る。)

竹中直人が「それでもボクはやってない」に引き続き、青木富夫(=小津安二郎の突貫小僧の役者さんの名前)という役名で、「靑木館」という劇場が舞台なのはニヤっとした。

 

「カツベン!」を観たあとマツダ映画社から出ている「大河内傅次郎 乱闘場面集」というビデオを観た。弁士松田春翠さんの解説付き。「忠治旅日記」「血煙高田馬場」「新版大岡政談」「素浪人忠弥」など伊藤大輔監督、唐沢弘光カメラマンと組んだ傑作、断片しか残ってないものも多いらしいが、それらの断片がこのビデオには収まっており、佐藤忠男*1も「時代劇映画とは何か」で、以下のようにほめておられる。

マツダ映画社がいろんなフィルムの断片を集めて作った『大河内傳次郎乱闘集』というビデオが素晴らしい。ここには、すでに伝説と化している伊藤大輔の『新版大岡政談』〔1928〕や『素浪人忠弥』〔1939〕の、たぶんサワリと言ってもいいのではないかと思える部分が見られるのだ。大河内傅次郎がどんな凄い形相でスクリーンをのたうちまわったか、それをまた、唐沢弘光のカメラがどんなに不思議なアングルから、その空間にねじ込んで行ったか、これらはやはりマツダ映画社が保存したマキノ正博の『浪人街・美しき獲物』〔1928〕のクライマックスの大立ち回りの断片ととともに不朽の宝物と言うよりない。

このビデオのラストには、活動弁士のテレビでも澤登翠さんや片岡一郎さんの活弁の違いを味わえた「血煙高田馬場」がおさめられている。生き生きとしてとても愉快だった。

*1:このビデオの監修もされている

関の彌太ッぺ

 

関の彌太ッペ [DVD]

関の彌太ッペ [DVD]

  • 発売日: 2014/12/05
  • メディア: DVD
 

歌舞伎の稽古場面をみたとき「(この作品は)長谷川伸(作品)じゃねえんだから(人情をあおりたてるような芝居をするな)」みたいな注意をされているところをみたが、こちらはその長谷川伸原作、まさに人情に訴えかける作品。だけどよく出来ている。錦之助演じる彌太ッペにうまくからませてある挟客箱田の森介の木村功。流れ者というもともとの立場は似ていて彌太ッぺの個性を際立たせる。

↑観た直後にはこんな感想だったのが、ちょうどそのあと、娘の出産があり、生まれたての女児の世話をしに遠征、帰り際その赤ん坊にこれからの人生をうまく乗り切っていってほしいなと願って話しかけていたら、彌太ッぺの名台詞を思い出して感極まってしまった。こちらのブログ参照。まさにまさに会ってはすぐ別れてしまう旅鴉から次世代に伝えたい言葉だ!!

彌太ッぺに助けてもらう娘の成人した姿に扮する十朱幸代がまたいい。十朱さん、「魚影の群れ」*1とかの時代にちょい汚れ役をみるまでほんと自分の中でどこかはかなげでかわいらしくみえる存在だったもんなあ。。

プチ沢島忠監督まつり

この秋は時代劇まつり、みたいな様相に。戦前の松竹の映画もだけど俳優さんの顔とか覚えだすと次々みるのが楽しくて。あと、なんかモヤモヤしがちな日常、すっきりできるというのもあって。沢島忠監督の映画をつづけざまに三本鑑賞。

 

まずは「酔いどれ無双剣

eiga.com

ふや町映画タウンおすすめ作品。友人windshipさんに「『赤ひげ』より面白い」とのたまわったそう。*1確かに「赤ひげ」的な医師を武道まじえ娯楽色豊かに描いている。 *2

私が注目したのは敵役の近衛十四郎氏。

画像ご子息松方弘樹さんともやはり似ておられる。

敵役がしっかりしていることで物語って楽しくなる。泥のような世界に漂いながらギリギリおのれの守りたいものを持っている男。立ち回り姿もセリフもかっこいい。彼の存在でずいぶんストーリーに厚みが増している。

そして、千秋実氏演じる落ち着いた看護係。彼の存在、そしてこの彼が!という展開でみているものの心をとても動かす。

 

 もうひとつみたのが「暴れん坊兄弟」

eiga.com

 

 橋本治氏の「完本チャンバラ時代劇講座」*3にも楽しげに紹介されているが、私もこの作品とても気に入った。ぼんやりしているけれど考え方のしっかりしている兄に東千之介。武力に頼らない知的で美しい人。現代でいうと高橋一生があいそうな。。

そこつだけど兄思いの中村嘉葎雄演じる弟侍、この元気があふれているのも楽しい。親友の遺児ということで千代乃介を大事に思い、身びいきになる進藤英太郎演じる家老、人を大切に思う愚直なまでの様子が笑いを誘いつつも胸をうつ。(この塩梅が肝心。)

クライマックスシーンも笑いつつうなずかされるし、なんとも楽しい気分になる逸品。

人文書院の「時代劇映画とはなにか」

 

 

筒井清忠氏いわく、邦舞出身で、歌舞伎出身者に比べるとおとなしくみえてしまう(意訳)東千代之助さんの資質を最大限に生かした沢島監督自身の脚本とのこと。ほんと私、どれかひとつ沢島監督作品をといわれたらこれをすすめるな。(筒井さんとも同意見)

 

もう一本はふや町映画タウンのおすすめ

右門捕物帖 地獄の風車」

db.eiren.org

 

テンポはすごくいい。大友柳太朗の右門も二作目でライバルあば敬が、「犬神家~」の加藤武さんみたいな立ち位置だったり子分のおしゃべり伝六の右門のむっつりとの対比が面白かったりなど、定番的なたのしみ。

ザ・ピーナッツが風車売りで登場。風車の幻想的な場面。大友柳太朗氏は役柄通りのまじめな人とどこかで読んだけれど、先日最期の日のことなど読んで*4、遺作となった「タンポポ」だとか、近衛十四郎の敵役をしていた「十兵衛暗殺剣」*5だとかもっとちゃんとお仕事再見したくなっている。

*1:酔いどれ無双剣 - windshipのブログ

*2:ふや町映画タウンの大森氏によると、山本周五郎沢島忠監督は親しく、これは正式に山本周五郎の「赤ひげ」の話の沢島版映画化として作られたとのこと。東映時代劇なので武術がまじえてあるのだそう。こちらのほうが黒澤の「赤ひげ」より早く作られている。

*3:橋本治さん - 日常整理日誌

*4:時代劇ざんまい - 日常整理日誌

*5:春日太一さん〜十兵衛暗殺剣 - 日常整理日誌

中川信夫監督の時代劇

ふや町映画タウンの大森さんいわく怪談映画で有名な中川信夫監督、時代劇と文芸ものが割とええですねん、ってことで中川監督の時代劇をいくつか。

 

「新編 丹下左膳 隻眼の巻」

movies.yahoo.co.jp

先日バンツマの丹下左膳*1を観たのだけど、よく声帯模写なんかもされていたスタンダード、大河内伝次郎丹下左膳が観たくなり、いくつかある丹下左膳もので迷っていたら、こちらが高峰秀子も出ていて良いとのこと。少しだけ出てくるのかと思いきや、メインともいえる働き。負傷した丹下左膳を預かることになる商家のお嬢さん、丹下左膳のこと「なによ、あんな気持ち悪い人」といいながら、好きになってしまうのがこぼれ出る表現がとてもかわいらしい。

youtu.be

 

左膳を助けた高峰秀子のおうちと左膳の敵との社会的な関係などから切なさや、損得を超えた義というものも意識させられたり、とてもキュンとする。

高峰秀子とのやりとりで丹下左膳の人柄も浮き彫りになり、わたしも大河内丹下左膳に大いに魅力を感じた。

中川監督、かわいらしさへの寄り添い「雷電*2や「エノケンのとび助冒険旅行」*3などでも感じたな。

 

f:id:ponyman:20201017221232p:plain左膳の婚約者的なお嬢様 山田五十鈴

f:id:ponyman:20201017221319p:plain沢村貞子もとても魅力的。ほんとに見どころたくさんの愛すべき作品。

f:id:ponyman:20201017221545p:plainタイトルに流れる折り鶴が、デコちゃん家での左膳とデコちゃん扮する娘の交流を表現していてとてもぐっとくる。とても好きになった。すごい掘り出し物。

 

右門捕物帖 片眼狼」

movies.yahoo.co.jp


ラカンさんの右門。ゲスト的出演で紀の国屋金左衛門なんてばらまき豪商に扮するエノケン。アラカンさんとエノケンの登場場面にスターの輝きを感じる。アラカンさんが太鼓たたいたり、エノケンが唄ってみたり。時代劇って歌舞伎的な楽しさに通じるものがある。だいたい筋はわかっていても、出てきてその恰好をみることの楽しさ。

先日観た大友柳太朗版「右門捕物帖 片眼の狼」*4とはタイトルはほぼ同じだけど筋が違う。しいて言えば変装して潜入捜査をする部分だけ共通。柳家金語楼が、右門の部下のおしゃべり伝六を演じていて、彼も潜入的なことをしていた。時々有名な顔をタコみたいにするのとか交えたり、だからといって自分を前面に押し出しすぎず、なかなか金語楼さんも良かった。右門を勝手にライバルとみなしているあばたの敬四郎というキャラクターがいて、その子分がちょんぎれの松というのだけど、松を演じた渡辺篤さんという方が軽妙で面白い。

進藤英太郎が悪の組織の元締め的な役だがその配下の浪人に

画像

伊藤雄之助さんがいたり(幹部クラス)、酒場でくだまいている連中の中に左卜全さん、そして、色川武大さんの「なつかしい芸人たち」*5で意識させられてから気になって仕方ない

画像

高勢実乗さん(中央ヒゲの人物 高瀬みのる名義)の登場も。豪華キャスト。

 

もう一本は

まぼろし天狗」

 

まぼろし天狗 [VHS]

まぼろし天狗 [VHS]

  • 発売日: 2000/02/21
  • メディア: VHS
 

 

movies.yahoo.co.jp

七人の侍*6を年いってから再見して千秋実氏、こんなにステキだったんだ!と思うようになったのだけど、この映画でのまとめ役もユーモラスでよき貫禄。

画像

画像

河原崎長一郎氏が調子のいい若者で、

画像

好きな太地喜和子(志村妙子名義)に「ふぐ提灯」なんて台詞の痴話喧嘩。新鮮。

大川橋蔵の二役も演じ分けがよかったし、二役が一緒に出てくるところなどに歌舞伎の手法みたいなものも感じたけれどどうだろうか?

高田浩吉氏がなかなかいなせな良い役どころ。大川橋蔵氏も高田浩吉氏も自分の小学校区内に邸宅を構えておられ、ランドマーク的な存在だった。橋蔵氏はテレビの銭形平次の認識メインで、こうしてお二人の映画での活躍時代を知るのは嬉しい。

検索していたら大川橋蔵氏のファンのサイトと思われるところにたどり着く。後援会誌からの引用などを楽しく拝見。(こちら)。