Focus、欽ちゃんのシネマジャック

 往年のテレビドラマ「王様のレストラン」のソムリエ役で注目し始めた白井晃が出ておられる作品を二つ観た。

 

王様のレストラン Blu-ray BOX

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  • 発売日: 2015/01/21
  • メディア: Blu-ray
 

 表紙には、白井晃氏、写っておらず・・こんな方大河ドラマ新選組!」では、清川八郎役。ちょっとクセのある役が多いとお見受けしている。

 

観た映画の一つめは、「Focus」

[Focus] [DVD]

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  • 発売日: 2000/10/06
  • メディア: DVD
 

浅野忠信扮する電波マニアのおとなしい青年が、白井晃氏演じるゲスなテレビマンの作る番組に協力させられ、ちょっとした転機から、場が抜き差しならぬものになっていく、というドラマ。浅野氏の役になりきった佇まいが凄まじく、入り込んで観る。ドキュメンタリーぽい長回しがすごい迫力で、観ている間集中が途切れない。

twitterこちらの投稿を拝見したのがきっかけだったけれど、教えてもらって出会えてよかった。

 

もう一つみたのは、「欽ちゃんのシネマジャック」なるビデオ。

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movie.walkerplus.com

ビデオジャケットの惹句、今見ると中途半端に古い気恥ずかしさがあるけれど、Movie Walkerの解説を読んでいると、「欽ちゃんのシネマジャック」という映画祭のようなものがあって、その時に上映されたもののようだ。萩本氏、こういうこともされていたんだな。

ビデオには黒沢直助の「探偵 ハーレム・ノクターン」、スタンリー・ クワンの「女とおんな」、市川準の「きっと、来るさ。」が収録されている。白井氏が出ておられるのは「きっと、来るさ。」。子どもたちの手作り劇団が、観客を待ち受ける話だけど、大人がしているので、はじめは、こどもの話?それとも・・となったのだけど、どちらにしろ、観客を待ちわびるというシチュエーションには変わりなし。市川監督らしい抒情的な世界でなかなか良かった。白井さんも萩本欽一と一緒に劇団の一員として出演してたけれど、一番目を引いたのは、白井さんとともに「遊◎機械/全自動シアター」を旗揚げされた高泉淳子さんの姿だ。

f:id:ponyman:20200320103238j:plainこの映画が公開された93年頃、フジテレビの子供番組「ポンキッキーズ」に「山田のぼる」君として登場されていた、そのことを思い出させてくれるお姿。当時高泉さんのことが気になって気になって舞台「ア・ラ・カルト 役者と音楽家のいるレストラン」にも行ったなあ。しゃれた小品で構成され、確か、ワインなども幕間に飲めたり、面白い公演だったと思う。*1

割合最近では三谷幸喜の舞台「ホロビッツとの対話」*2でお見掛けしたりしていたし、自分が意識していないだけで、ちょこちょこ出ておられるみたいなのだけど、ちょっと意識して最近のお姿をみたくなっている。彼女のwikipediaに載っていた「主に泣いてます」のトキばあおもしろそう。。

「欽ちゃんのシネマジャック」のビデオにはコント55号のコントも入っていたが、これは、欽ちゃんが二郎さんをいじりたおす趣向の話で、私はどうも苦手だった。

他収録作については「探偵」は橋爪功さんが探偵だが、私があんまり好きじゃないフィルム・ノワール系で、自分にはあまり響かなかった。(フィルムノワールってともすると、かっこつけているだけという風にみえてしまう。)

「女とおんな」はマギー・チャンが美しいなという感想。作品のキレは良かった。

 
笑顔

*1:wikipedeiaによると、途中からワインは出されなくなったそうだ。

*2:ホロヴィッツとの対話 - 日常整理日誌

結婚 女たちの夜明け、恋の旅路

 ローレンス・オリヴィエが関係している二本の映画を観た。(両方TVムービーと思われるけれど「恋の旅路」のみall cinemaにTVムービーと記載されている。) 

 

 

 
結婚 女たちの夜明け [VHS]

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  • 発売日: 1989/08/04
  • メディア: VHS
 

 

「結婚〜女たちの夜明け」は ローレンス・オリヴィエ製作・監督。1912年の最優秀演劇賞をとった戯曲とのこと。

舞台はイギリスの繊維工業地帯ランカシャー。織物会社の職工の男の娘が、遊びでつきあった相手が父の友人である織物会社の社長の息子。その場限りの関係のはずが、とんだ事故の余波で、両親の知るところとなる。もともと社長の息子は、財産家で有力者の娘と婚約しており・・本音、建て前、友情、欲望・・さまざまなものがうずまき、相手の出方によって微妙に話をシフトチェンジさせたり・・のやりとりが舞台劇っぽい面白さ。演技のしっかりしているところ、「ダウントン・アビー」をみてるみたいな、階級を含む、また階級を超えた人間の多面性の表現が、秀逸で、すごい拾いもの。ふや町映画タウンの☆(ちょっと、おすすめ)作品。

職工たちの慰安旅行先として名前の出てくるのがブラックプールという地名。「Shall we ダンス?」で名前出てきていたなあ。

 

filmarks.com

「恋の旅路」は、ローレンス・オリヴィエキャサリン・ヘップバーンのやりとりがおもしろい法廷もの。ローレンス・オリヴィエ扮する弁護士の若き日の忘れられない相手がキャサリン・ヘップバーン扮する元女優、今は富豪の未亡人。オリヴィエはヘップバーンのことが忘れられないのに、ヘップバーンは過去の思い出なんか思い当たるところなし、という感じでオリヴィエに自分が若い男との間に起きたトラブル、訴訟の依頼をしてくる。。ヘップバーンの依頼を受けてのオリヴィエの舞い上がり振り回されている演技、男性はロマンチストだけど女性は現実主義っていう雰囲気がとてもおもしろい。若いやり手弁護士との法廷外での言葉の応酬なども軽妙でコミカル。

ヘップバーンは、苦労のあげく、名士の妻になった人で、今手に入れた名誉をとても大切にする人の役。法廷作戦でかわいそうな老婆風にしろ、とオリヴィエに指示されても勝手なことをしている。「マイ・フェア・レディ」みたいな衣裳が笑えるが、痛々しくないのがお人柄!そして、要求通りの老婆風の演技(こんなことできるかよ、って感じで演じてみせる)部分もとても笑えた。

裁判ってこんなん?って思いながらみたけれど、陪審員が判断するから陪審員の心にどう訴えるか、ということが重要ということで、なるほど、と自分は納得し楽しみながらみた。

監督はジョージ・キューカー。(だから「マイ・フェア・レディ」的な衣装だったか!)「フィラデルフィア物語」など、じゃじゃ馬な感じのキャサリン・ヘップバーンを撮るのもうまいんだなと思う。

 

蜜蜂と遠雷

 

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)

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  • 作者:恩田 陸
  • 発売日: 2019/04/10
  • メディア: 文庫
 
蜜蜂と遠雷(下) (幻冬舎文庫)

蜜蜂と遠雷(下) (幻冬舎文庫)

  • 作者:恩田 陸
  • 発売日: 2019/04/10
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読んだのは単行本版。

この作品が映画化された時の音楽に惹かれ、その作品世界が知りたくなり読んでみた。

私の好きなコンクールもの。そこで奏でられる音楽自体が語る感じ。これを映画化するのは無理といわれていたのもよくわかる。

映画の予告編で見知った配役のイメージで、栄伝亜夜(なんと「ガラスの仮面」的なネーミング!)は、松岡茉優の姿、高島明石は松坂桃李の姿で小説をなぞった。

今、ウィルス騒ぎや、またたまたま身内も病気になったりして、ともすると凹んでしまいそうな日々の中で、とりあえず自分には帰る場所(小説の続きの世界に入れること)がある、という気持ちを読んでいる間持ち続けられた。登場人物たちが一度は心を塞がせながらもそれぞれの相互作用で前に進む姿がわざとらしくなく、リアリティのある感じで描かれているから。日本の学校生活の中では、ともすると、才能があるということを隠して生きていった方が楽、みたいなくだらないことがあるような気もするけど、そんなことはねのけるような国際的なピアニストたちの希望がとても気持ちのよい作品だった。予選に力が入り、本選はさらっとまとめてあって、結果だけ読者に伝える感じもスマートだ。

マイ・フレンド・メモリー

 

マイ・フレンド・メモリー [DVD]

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  • 発売日: 2005/08/26
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 みたのはVHS版。

英国のピーター・チェルソム監督、「ヒア・マイ・ソング」*1「ファニー・ボーン」*2とみてきていずれも佳作であった。そして、ハリウッドに招聘されてのこの映画。どうしてもこういう経緯の監督作品にありがちの、持ち味がハリウッド流の味付けになっているなというのは少し感じた。ちょっと良い話で個性のあったものが、大仕掛けになっているというか。

体は大きいけれど、学習障害もあり、犯罪者の父の影におびえ、ただただ周りに屈従するばかりだった少年が、難病を抱え体は不自由だけど頭のいい少年に出会い、変わっていくさま、それをアーサー王伝説になぞらえているところはやはりこの監督って趣味がいいなあとは思う。難病の少年役は「ホーム・アローン」のマコーレ・カルキンの弟、キーラン・カルキン。体の大きいほうの少年がなかなか良かったが、エルデン・ヘンソンという人らしい。

邦題は甘ったるいけれど、もともとは「The Mighty」。こちらの方が映画の魂を反映している。

 

 

マン・オン・ザ・ムーン

 

マン・オン・ザ・ムーン [DVD]

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  • 発売日: 2020/01/17
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観たのはvhs。

ジム・キャリー演じるアンディ・カフマンという、緊張と弛緩多用のすれすれの芸をする芸人の姿の凄み。ひりひりするやら揺さぶられるやら。

プロモーターを演じているダニー・デヴィートがいい感じ。彼はwikipediaによるとアンディ・カフマンと知人で、この映画の製作にも関わっているとか。

ミロス・フォアマン監督、「ラリー・フリント」(これは、テレビで流し見なので書くのはばかられるけれど)でも、「アマデウス」でもクセのある人間をクセ出しながら、そこがいいんだよと描いている気がする。人がどういおうが、自分の信念のもとに動くのだという精神が感じられるのは、チェコからアメリカに社会的な事情で移ってきた人だからなのではないだろうか。「カッコーの巣の上で」はもちろんそれが濃厚で。

えんがわの犬/恋、した。ブルームーン

 

みたのはvhs。

ビデオジャケットの解説によると「恋、した。〜ブルームーン」というのは、失恋をテーマにしたテレビドラマの一編で、毎回田口トモロヲ扮するバーのマスターがモチーフとなるカクテルを主人公に差し出す趣向になっているとのこと。

ある男性を男性の郷里まで追ってきた女性が出会った少女との出会い。詩情にあふれているし、少女の少女としての魅力も際立つ。

収録はこちらが先に入っている。

「えんがわの犬」の方も少女が出てきて行定監督は、つぼみの美しさを描くのが上手いように感じた。季節感の表現も素晴らしい。こちらは、「ゆうばりシネマワークショップ」というところで、机上の講義でなく、実践的に映画づくりを教えたいという熱意から作られた作品とのこと。空気はとても良いのだけど、根幹になるストーリーが少し歌舞伎の「沼津」みたいなところがあって、みるものに、ここで感動、みたいな方向性を与えてしまうような気はした。種明かし的なシーンを設けず、ヒントだけで観客に想像させる、それで良かったのではないかな。。最近気になっている諏訪太朗氏が医師で登場。

レベッカ

 

レベッカ(字幕版)

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  • メディア: Prime Video
 

幼い頃から名前だけは聞き、いつか観ようと思っていた作品。大筋知っていても何とも楽しめる。ちゃんと観てよかった。

冒頭の、主人公の横にいるおばさんの俗物的コミカルさが効いていて、観る者も主人公と同じ地点から、結婚して住むことになるローレンス・オリヴィエ扮する大金持ちの英国紳士の館の本格や怖さに触れていける。ヒッチコックって、ふと我に返ると不気味なとこあるよな、というポイントをつかまえて、観客を持っていくのうまいなあ。館に住む前妻付きの使用人の完璧な雰囲気、悪意の持っていきようが、少女マンガばりのわかりやすさでまたまたひきつけられる。素晴らしい下準備をして大真面目に演じられる玉の輿って度胸いるぞ、という物語、堪能した。