昭和53年 曽根中生監督作品。
樋口尚文氏の「ロマンポルノと実録やくざ映画」には、「七十年代の日活ロマンポルノを代表するーーというより日本映画を代表する傑作であることは間違いない」と書かれている。
ヒロイン名美役の水原ゆう紀氏は宝塚出身の清純派アイドルで「本陣殺人事件」のヒロインも務めたとのこと。前述の本にも、曽根監督の「嗚呼!!花の応援団」*1に少し出演されたあと来た脚本にすごくほれこみ、入り込んで演じられた旨が書かれている。
しかし乱暴されて堕ちていく女性が主人公でしょっぱな、ブルーフィルムに映ったそのシーンから始まる本作は、犯罪ものが苦手な自分、そして現代の世の中の流れの中からみるとかなりつらいところがあった。水原さんも名美がかわいそうでいとおしくてもうすっかり入り込んで演じられたそう。
全体を通して、曽根中生監督のリアリスト的な空気に惹かれた。ヒロイン名美に惹かれる蟹江敬三演じる人物の仕事はポルノ雑誌の編集者。その仕事の現場の風景が「ザ・仕事の手順」という感じで明快だ。その中でバランスをとって生きていたはずの蟹江に訪れるパッションというところにコントラストがついている。
ロマンポルノという制約の中で、いわゆるポルノ的な性の消費のなかの神話的な物語を紡いだものではあるけれど、蟹江敬三演じる主人公が嫌気がさしているような世界の耐え難さが心に残ってしまった。
みたのはvhs版。